パッケージには水着姿で怯える女性。もうこれだけで「サメに襲われてひどい目にあう映画」と察します。
海といえばサメ、あるいは未知の巨大生物?そんな想像を膨らませながら観始めたのですが、冒頭からただならぬ不穏さが漂っています。穏やかな海にイルカが現れ、クジラの死体が浮かぶ。観客に「何か来るぞ」と身構えさせる巧みな演出が続きます。そして、ついに登場する人食いサメ。これがまたしつこい。
映画をざっくり紹介+動画
医学生のナンシー(ブレイク・ライブリー)は、亡き母から聞かされた秘密のビーチを訪れます。勉強と家族の世話に追われる日常から解放され、ひとときの休暇を楽しむはずが、一匹の巨大な人喰いサメに襲われてしまう。脚を負傷し、血を流しながら必死に岩場へたどり着いた彼女は、孤立無援の状態でサメと対峙することに。刻々と迫るタイムリミットの中、彼女が選んだ決断とは何か――。
サメ映画にしては“出し惜しみ”が光る
サメ映画なのでずが、肝心のサメはなかなか登場しません。むしろ海の静けさ、そして「出そうで出ない」時間が長いのです。これが逆に観客の緊張感を高めてくれる仕掛け。しかも登場したサメはとにかく執念深く、何度も彼女に襲いかかります。助け舟になりそうな存在はことごとく潰され、最後はナンシーの体ひとつが武器。定番の「サメVS人間」の構図ながら、極限のサバイバル感を強調していました。
ブレイク・ライブリーの存在感
主演のブレイク・ライブリーといえば『アデライン』などで品のあるお嬢様役の印象が強い女優さんですが、本作では水着姿でサメと格闘するサバイバルヒロイン。彼女は単なる“美しいヒロイン”にとどまらず、母を失った悲しみや生き延びようとする執念を表情で見事に表現していました。少し品のある雰囲気を持ちながら、必死に生き残ろうとする姿に惹きつけられます。
個人的な思いですが、この女優さんはしっかり服を着ているときのほうが魅力的ですね…。
気になる謎と解釈
本作には気になる点がいくつか残りました。
まず、母が教えてくれた「秘密のビーチ」の名前が最後まで明かされないこと。単なる秘密のスポットというより、何か象徴的な意味が込められていたのかもしれません。
次に登場する白い海鳥。途中から彼女のそばに寄り添うように描かれ、まるで母の化身のようにも見える。果たしてそれは幸運の象徴だったのか、彼女の心を支える存在だったのか…。解釈の余地を残していました。
タイトルの違和感と余韻
原題は「The Shallows(浅瀬)」。このシンプルな言葉に、サメとの死闘の舞台となった“海岸近くの浅瀬”の恐怖が凝縮されています。邦題の「ロスト・バケーション」も悪くはありませんが、むしろ原題そのままでもよかったのではと感じました。最後まで見終わったとき、サメの恐怖よりも「孤独と時間に追い詰められる恐怖」が強く残る一本でした。
ブレイク・ライブリーの存在感に大きく支えられたサメ映画。
ちょっとツッコミどころはあるものの、美しい映像と極限のサバイバルが印象に残る作品でした。