この映画、冒頭から世界観に一気に引き込まれました。近未来の地球は真っ二つに分断され、表側には富裕層、裏側には労働者層が暮らす。労働者は地球の“コア”を通って通勤し、ただ搾取されるだけの毎日。映像で描かれるその街並みがまた素晴らしいのです。アジア各国の雰囲気が混ざった雑然とした街並みや、地球エレベーターの圧倒的スケール。これを文章で表現するなら膨大な言葉が必要ですが、映像なら一瞬で伝わる。やはり視覚情報の力は強烈で、スマホの小さい画面で観るのがもったいなく感じました。
映画をざっくり紹介+動画
主人公は工場労働者のダグラス・クエイド(コリン・ファレル)。美しい妻(ケイト・ベッキンセイル)を持ちながらも、単調な日々に嫌気がさし、人工記憶センター“リコール社”を訪れます。彼が求めたのは「スパイの記憶」。しかし手術の最中、突如知らない自分が目覚め、世界が一変。果たしてそれは本物の記憶なのか、それとも植え付けられた幻想なのか。ダグラスは階級社会を覆し、やがて世界の運命を左右する戦いに巻き込まれていきます。
これは夢か現実か? ― リコール社の謎
物語を追っていると、「これって全部夢なんじゃないか?」という疑念が頭を離れません。最後のシーンでちらりと映るリコール社の看板。物語の流れから考えれば、わざわざ出す必要はなかったはず。むしろ「ここまでの出来事は人工的に植え付けられた記憶かもしれない」と暗示しているように見えます。
よく考えれば、リコール社で「体が勝手に動く」と言った直後から、銃の扱いやヘリコプター操縦など、突如能力を発揮し始めます。これは夢オチなのか、それとも彼の本当の記憶が蘇ったのか。最後まで解釈が揺さぶられる仕掛けになっているのです。
鬼嫁VS反逆者 ― 女性2人の迫力バトル
この作品の大きな見どころのひとつは、女性キャラクター2人のバトル。特に「鬼嫁」役のケイト・ベッキンセイル。夫を執拗に追いかけ、鬼嫁だのビッチだの「口撃」も肉弾戦も容赦なし。狭いエレベーターで繰り広げられる格闘は息を呑む迫力です。
私は正直、彼女の強さと執念深さに惹かれてしまいましたね。最後まで諦めないその姿勢、まさに圧巻。追いかけられる人生も悪くない…と妙な感情すら湧いてしまいました。
リメイク作品としての魅力と違い
1990年のシュワルツェネッガー版『トータル・リコール』を知っている方には、本作との違いも興味深いはず。旧作では舞台は火星でしたが、2012年版は地球の分断社会。物語の骨格は違えど、随所に旧作を意識した要素が散りばめられています。
リコール社で「火星の支配者になる記憶」を植え付けるシーンは、旧作ファンなら思わずニヤリとするポイントでしょう。そして旧作と同じく、ラストに「すべて幻だったのでは?」と暗示を残す。この構造が実に巧妙で、単なるリメイクにとどまらない作品へと仕上がっています。
アクションでスッキリ、余韻で考えさせられる
銃撃戦にカーチェイス、大爆発、そして手に汗握る肉弾戦。エンタメ要素はしっかり押さえつつ、観終わった後には「記憶と現実の境界とは?」という問いを残してくれる。そんな二重の楽しみ方ができる映画です。週末にスカッとしたい人にも、SF的なテーマでじっくり考えたい人にもおすすめの一本。