バードマン あるいは(無知がもたらす予期せぬ奇跡)~過去の栄光に追い立てられる男のお話
第87回アカデミー賞(R)で最多4冠!(作品賞/監督賞/脚本賞/撮影賞)全編1カットかと見紛う長回し映像で圧倒的なリアル感と臨場感は必見!!かつてスーパーヒーロー映画で大スターとなったが仕事も家族も失った落ち目の俳優が、復活を賭け奮闘する様をブラックユーモア満載で描く、人生再生のドラマ。
何とも不思議なタイトルですよね。
何をさしているのかは、おそらく作中で語られると信じて映画を見始めました。
主人公はリーガンという初老の男性。
彼はかつてバードマン役で一世を風靡しましたが、それ以降は鳴かず飛ばずの俳優です。そんな彼が再起をかけて舞台に挑戦するというのが大きなあらすじです。
映画を見て感じたのは、リーガンはいろいろなものを背負いすぎなのではないでしょうか。家庭のこと、娘のこと、それから舞台のこと。
焦りなのかプレッシャーなのかわかりませんが、楽屋で暴れるシーンは何とも言えない気分になります。
そんな彼の心の叫びに呼応するようにバードマンが登場します。
このバードマンはリーガンのイマジナリーフレンド…ではないですか。
心の中の闇や自分の欲望というほうが良いかもしれないです。私は味方ではなく敵に見えました。
バードマンが登場すると、リーガンは超能力のようにモノを投げたり、空を飛ぶことができます。
この描写から彼はバードマンの栄光が忘れられない男なんだということがわかります。
ありきたりな言葉ですがバードマンの呪いです。バードマンを黙らせなければリーガンの幸せはないのです。
ですが、そんなリーガンを笑うことはできません。
男ならだれでも思うはずです。まだいける、俺ならやれる。
それなりに年をとりそれなりに死ぬという考え方もありますが、それってちょっと寂しい。
リーガンは多くの困難に打ち勝ち、公演の準備を進めます。
プレビューでちょっとしたハプニングがありました。これが原因で舞台は世間から大注目され、リーガンは再び時の人になります。
もしかしたらこれが、予期せぬ奇跡で彼は栄光を取り戻すのかと思ったのですが…
え、銃?実弾?それはいかーん。
で、ここから不思議なエンディングに向かうわけなのですが、リーガンってやっぱりあの時死んじゃったんじゃないかな。
それか、生死の境をさまよっていてサムが来たタイミングで結局死んじゃうと。ちょっと飛躍しすぎですかね。
そうでなければサムが窓から顔を出して上を向き微笑む意味が分からない。
あの花束とか、花の匂いがわからないとか、そのあたりって死を示していないですか?
素直に見れば彼は一命をとりとめて、過去の栄光を取り戻したということになると思います。
彼はバードマンに打ち勝ち、バードマンそのものになったはずですが、飛び降りを彷彿とさせるようなシーンが挟み込まれるじゃないですか。
少し前にあったビルの上に立つリーガンのシーンも頭に残っています。
だめだ、私の頭ではわからない。
それにしても、演劇界や芸能界を揶揄しているのか、離婚した元妻と恋人が同じ舞台に立ったり、EDの男が舞台の上で突然やる気になったりとか貞操観念が無茶苦茶で人類みな兄弟という世界です。
見る人の生きざまによっていろいろな解釈がありそうないい映画だなと思いました。
こういう映画はいいですね。