ゆれる人魚~大人の人魚姫。残酷で儚いよ。
1980年代のポーランド・ワルシャワで、人間たちを捕食して生きる美しい人魚姉妹は海からあがりナイトクラブにたどりつく。ストリップやライヴ演奏を披露する大人の社交場で、ふたりは得意のダンスと歌を披露し、すぐにスターになる。そんななか、姉シルバーはベーシストの青年ミーテクと恋に落ちる。初めての恋に浮かれるシルバーだが、妹ゴールデンは、そんな姉を複雑な眼差しで見つめていた。人魚にとって、人間の男は“餌”でしかないからだ。やがてふたりの間に生じた緊張感は限界に達し、残虐で血なまぐさい行為へと彼女たちを駆り立てる……。(C)2015WFDIF, TELEWIZJA POLSKA S.A, PLATIGE IMAGE
小さいころ読み聞かされた人魚姫ってハッピーエンドのイメージがあまりなかったんですよね。
最近子供達と一緒に読んだ人魚姫は、王子様と無事に結婚していました。
この結末になんとなく違和感を感じていたのですが、まあ悲しいよりかはハッピーエンドのほうがいいかくらいにしか思っていませんでした。
しかし、この作品はなかなか刺激的な1本でやっぱり人魚姫はこうじゃなくっちゃと思ってしまいました。
まず、人魚は姉妹で登場します。この2人、髪色も性格も表情も全く違う。この姉妹にした点は素晴らしいと思います。
で、二人ともいきなり裸です。
彼女たちからしたら、服を着ているほうが異常ですものね。そんなもんでしょう。
恥じらいもなく前回なので、見ているこちらのほうが恥ずかしくなるくらい。
正直なところをいえば、若い女性の素敵な裸体が見られてうれしいです。
それから、人魚の尻尾はかなり意図的にグロテスクに作ってあります。もうね、うつぼとか太刀魚みたいな長細い魚類そのもの。
このテカテカ感といいますか、ぬるぬる感といいますかこれがまた気持ち悪い。
そしてアレのやり方も教えてくれます。ここに入れればいいよって。
この話をする人間たちは本当に卑猥です。人間の屑じゃないかしらと思いました。
そんな人魚たちはもちろん歌が上手。
ストリップの舞台で歌って脱いで人魚に変身して、一躍有名になるのですが、まもなく人魚たちは、人間のもつ汚さや醜さのようなものに少しずつ影響をされてしまいます。
濡れる髪の毛とか、食われる人間とか、なんとなくダークなイメージで映画は進んでいきます。
これいったいどうなるのだろうと思っていたら大変なことを忘れていました。
人魚は人間と恋に落ちなければ人魚姫の話にはなりません。
恋をしたのは人の良さそうな姉の方。その相手はストリップ劇場お抱えのバンドマン。
とってもイケメンでやさしい彼。二人はそのうち愛し合うようになります。
一方妹はそれを危険視し、人間の男なんて信じるもんじゃないと姉に忠告します。
そうです。ましてやモテる代名詞ともいえるバンドマン。魚類なんて捨てられるに決まっています。
しかし、姉の思いは止まりません。
「魚とは寝ない」という、バンドマンのなんだかよくわからないポリシーがきっかけで、人魚は魚であることを辞めるのです。
このシーンはなかなかグロテスクです。実際の物語では魔女にお願いにいくのですが、映画では外科医に頼みます。
その報酬として支払うのは、美しい声。車いす生活となった人魚さん。
はじめはバンドマンが献身的に支えてくれ、このままハッピーエンドかと思いきや、
彼の目の前に現れたイイ女に一瞬で寝とられてしまいます。
そしてすぐに運命の結婚式へ。
かわいそうな人魚姫。
彼女が再び人魚に戻るためには、結婚式の夜に愛する人の心臓を食らうしかない。
ですが、やはり彼女は愛する人の命を奪うことができず、朝日を浴びて泡になってしまうのです。
あー、悲しい。悲しすぎる。そして人間ってなんていい加減なんだろうと思ってしまいます。
しかしこの作品を見ると、人魚が泡となるほうが人魚姫の物語としてはしっくり着てしまいました。
今回のレビューではあまり書いていませんが、妹が最後までいい感じでからんでくれるんですよね。
そりゃ普通そうするでしょ。悪いのはあなたたちではない、偽りの愛を語ったバンドマン、ひいては罪深い人間すべてが悪いのです。
それ以外にも姉妹はイルカのように超音波で話ができたり、ドラキュラの様な牙が生えてきたりとものすごくよく練られた設定で、本当に面白かった。
エログロが好きな方でなくても楽しめる1本です。オススメです。