アマプラビデ王の日々

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アクト・オブ・キリング~狂気に満ちたインドネシアの殺人者たちの告白

 

1960年代のインドネシアで密かに行われた、100万人規模の大虐殺、いわゆる「9月30日事件」を題材にしたドキュメンタリーです。この映画は、殺人を実行した「プレマン」と呼ばれる民間のやくざ・民兵たちに、自らの行為を映画として再現させる、という衝撃的な手法で製作されています。

 

このドキュメンタリーを観ていて、私は終始、プレマンたちが踊らされているように感じていました。自分たちの行動をフィルムという客観的なものを通して見ることで、彼らがどれだけひどいことをしたのか、その罪の意識を感じさせようという意図が、製作陣にあったように思います。

 

映画『アクト・オブ・キリング』とは?

2012年に公開された『アクト・オブ・キリング』(原題:The Act of Killing)は、ジョシュア・オッペンハイマー監督が手がけたドキュメンタリー映画です。1965年のインドネシアで起こった共産主義者大量虐殺の実行犯であるアンワル・コンゴやその仲間たちが、自らの殺人の様子を映画として再現する姿を記録しています。彼らが、映画の演出を通して自らの行為の残酷さに気づき、葛藤する姿を映し出すことで、国家が行った暴力と、その後の社会の歪みを浮き彫りにした作品です。


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見どころ:殺人者たちの映画製作と、狂気の告白

プレマンたちが作る映画は、素人が撮る三流映画のようですが、実際に殺害される役や尊厳を踏みにじられる役を演じることで、自分たちがいかに残虐な行為をしたのか、その愚かさに気づいていきます。

主人公のアンワル・コンゴは、1,000人以上を殺したとは思えないほど、穏やかな表情をしています。金銭的にも余裕があるのでしょうし、服装にも気を遣っていることがわかります。しかし、一番恐ろしさを感じたのは、彼の隣にいた、あの太鼓腹の男です。話している内容は普通なのに、人魚姫の魔女のような変な衣装で、顔色一つ変えずに話をする姿は、本当に怖かった。サイコパスってこういう人を言うのではないかと思いましたね。

 

もう一つ強烈な嫌悪感を覚えたのが、プレマンたちを利用して政治的に成功した人たちです。同じ人間なのに、彼らをどうしても好きになれない。結局プレマンは、彼らに利用されただけなのではないでしょうか。

 

ショッキングな映像と、タブーの現実

全編を通して感じる違和感、不快感は、これまでにないものでした。義理の親をプレマンに殺された男のシーンや、乳飲み子を差し出すシーン、そして村を襲ったシーンで呆然とする母親の表情は忘れられません。彼女はもしかしたら、親しい人をプレマンに惨殺されたのかもしれません。

 

これがつい最近起きた出来事で、さらにインドネシア国内ではこの出来事に触れることがタブーとされている。そして今でも、共産党メンバーへの迫害が続いていると考えると、人間というものは本当に恐ろしいな、と感じずにはいられませんでした。

 

ゆっくりビールを飲みながら見るような映画ではありませんね。あの国が狂っているのか、それとも私のほうが異端なのか。観ているこちらの精神まで壊れてしまいそうな、強烈な一本でした。