週末にまったり見ようと思って選んだ一本だったんですが、重いテーマでした…。地球上には、まだまだこんな悲惨な現実があるんですね。
衝撃の現実:ISに蹂躙される女性たちの命と尊厳
この映画は、過激派組織「IS(イスラム国)」と戦う女性兵士たちの姿を描いた作品です。女性弁護士であるバハールが住む町がISの襲撃を受け、男性は殺され、子供たちは拉致され、そして女性たちは性奴隷として過酷な運命をたどります。
しかし、バハールは息子を取り戻すため、決死の覚悟で脱出。そして、武装部隊「太陽の女たち」を結成し、故郷と家族を取り戻すために立ち上がります。その活動を取材すべく、戦場記者マチルドが現地に乗り込むのですが、彼女たちが直面するのは、地獄よりも過酷な戦いでした。
これはドキュメンタリーチックに描かれていますが、登場人物は役者さんです。しかし、実際に現地に足を運んだジャーナリストの情報をもとに作られているというだけあって、そのリアリティには息をのみます。拉致、監禁、レイプ、殺害…子供までもが例外ではないという、想像を絶する残虐行為が繰り返されている現実に、ただただ胸が締め付けられます。女性軽視なんて生易しいものではなく、もうほとんど「道具」のような扱いですよ。同じ人間として、なぜこんなひどいことができるのか、理解に苦しむばかりです。
激戦の最前線で戦うのは信念か、それとも…
映画の中で描かれる「太陽の女たち」の戦いは、まさに命がけです。彼女たちは、自分たちの信念のために戦っているというよりも、大切なものを守るため、そして奪われたものを取り戻すために銃を手にしているように見えました。
この地域の人々が、本当の意味で自分たちの信念のために戦っているのか、それともそれはただのきっかけに過ぎず、実際は自分たちの私利私欲のために戦争を繰り返しているだけなのか。部外者の私がどちらが良いとか悪いとか判断すべきことではないのかもしれません。しかし、人を傷つければ痛いことは分かるでしょう。食事を与えなければ死ぬことくらい、分かるはずでしょうに。なぜ、ここまで非道になれるのか、私には理解できませんでした。
バハールを演じたのは、イラン系フランス人女優のゴルシフテ・ファラハニです。彼女の力強く、しかし悲しみを湛えた瞳が、バハールの葛藤や決意を見事に表現していました。戦場記者マチルドを演じたエマニュエル・ベルコも、冷静かつ真摯に現実を伝えるジャーナリストの姿をリアルに演じています。
涙の先に何を見るのか
映画のタイトルに「涙」とある通り、作中には本当に多くの涙のシーンがあります。それは悲しみの涙であり、怒りの涙であり、そしてもしかしたら、わずかな希望を見出した時の涙なのかもしれません。
週末に見る映画としては、確かに心が重くなってしまう内容でした。しかし、この作品が描く現実は、決して目を背けてはいけない、地球のどこかで今も起こっていることなんです。
目を背けてはいけない世界の現実がここにある
「バハールの涙」は、ISとの戦いの最前線で、女性たちがどれほどの苦しみを経験し、それでもなお、いかにして立ち上がり戦い続けるのかを描いた、非常に重く、しかし重要なメッセージを持つ映画です。
この作品は、私たちが普段の生活の中で意識することの少ない世界の現実を突きつけ、平和がいかに尊いものかを再認識させてくれます。少しばかり心が重くなるかもしれませんが、目を背けずに見てほしい、そんな一本です。