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チェルノブイリハート~故郷を奪われた子どもたちが問いかける、見えない恐怖

 

ドキュメンタリー映画が突きつけた、他人事ではない現実

今回ご紹介する『チェルノブイリハート』という映画は、2003年のアカデミー賞ドキュメンタリー短編部門グランプリを受賞した作品です。1986年4月26日に発生したチェルノブイリ原発事故によって、大量にまき散らされた放射能が、この地に生まれた子どもたちに大きな影響を与え、心臓に重度の障害を負った子どもたちがたくさん生まれている。この地域の現状をまとめたドキュメンタリー映画なんですが、観ていて「これは決して他人事ではない」と感じずにはいられませんでした。

 

東日本大震災で、第二のチェルノブイリとまで言われた原発事故が発生し、いまだ立ち入り禁止区域があって廃炉に向けた問題も山積み。あれからずいぶん時間が経っているのに、全く進行する気配がないのを見ると、やはり人間の手に負えるようなものではないのかもしれませんね。

 

映画『チェルノブイリハート』とは?

『チェルノブイリハート』(原題:Chernobyl Heart)は、2003年に公開された短編ドキュメンタリー映画です。1986年のチェルノブイリ原発事故後、ベラルーシやウクライナで生まれた子どもたちに多発している心臓疾患「チェルノブイリハート」の実態を追っています。医師やNPO、そして影響を受けた子どもたちの姿を通して、放射能がもたらす長期的な健康被害と、故郷を追われた人々の苦悩を浮き彫りにした作品です。


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見どころ:故郷を奪われた人々の悲劇

映画全体はとても重苦しい雰囲気で進みます。ただ、この手のドキュメンタリー映画によくあることとして、いたずらに同情を誘うシーンや、直接は関係がないのにショッキングな映像を見せる、という演出がいくつか見られました。

 

あのリポーターが精神障害者の施設に行くシーンは、誤解を招きそうな演出ですよね。障害のある子どもたちを育てられないから捨てる、というのが問題であって、障害の発生と放射能が関係があるかどうかは、この映画だけでは分かりません。また、水頭症の子どもを抱っこしたり、世話をする看護師に対して「もっと優しくして」などと声をかけるあたりは、ちょっとやりすぎかと思いました。水頭症の子どもの治療ができないのは、国力の差であって、チェルノブイリが直接的な原因ではないのでは?という疑問も残ります。

 

しかし、それらが演出だったとしても、彼らが置かれている状況は悲惨であり、ただそこにいただけというだけで一生つらい思いをするのは、あまりにもかわいそうです。

 

忘れ去られた故郷と、私たちの責任

ラストの若者たちが立ち入り禁止区域に忍び込むシーンも、少し違和感がありました。何十年も人が入っていないマンションなら、もっと埃っぽい気もしますし、「家具は持ち出せなかった」という割には、部屋がすっからかんだったり……。

 

それでも、彼らが故郷を追われ、そこに住むことができなくなったという事実は変わらないでしょう。放射能の影響による健康被害の話は、日本ではあまり聞くことがありませんが、単純に漏れ出た放射能の量が少なかったのか、それとも情報が隠匿されているのか。目に見えないものですから、私たちにはどうしようもありません。

 

この映画を観て、私にできることはなんだろうか、と考えさせられました。過去の悲劇を忘れずに、同じ過ちを繰り返さないために、私たちができることはきっとあるはずです。