映画の概要:一人の開発者が背負わされた「罪」とは
2023年公開の映画『Winny』は、2000年代初頭の日本で実際に起きた“Winny事件”を題材にした実録ドラマ。ファイル共有ソフト「Winny」を開発した東大大学院出身の技術者・金子勇と、彼を弁護した若手弁護士・壇俊光の闘いを描いています。監督は松本優作、主演は東出昌大(壇役)、三浦貴大(金子役)と、実力派俳優が揃っています。
「あの頃」を知っている人ほど刺さりますよね
このWinnyがきっかけでP2Pという言葉が有名になったのではないでしょうか。
私もあの頃、Winnyを使っていました。ある日突然、「開発者逮捕」のニュースが飛び込んできた。「えっ、これって犯罪なの?」と、正直なところ驚きました。
そして時は流れ、2023年。あの事件が映画になると聞いて、「これは観なきゃ」となったわけです。
見どころ① 技術は悪か?正義か?社会との摩擦が胸に刺さる
『Winny』の見どころは、単なる法廷ドラマではないところです。
技術者・金子勇が追い求めていたのは、情報共有の革新でした。P2Pによる分散型のネットワークは、今で言えばブロックチェーンやWeb3にも通じる概念。つまり、彼の発想は時代を先取りしていたのです。
けれども、現実はどうだったか。
「情報漏洩」「著作権侵害」──技術の使い方を誤ったのはユーザーだったにも関わらず、社会の矛先は開発者へと向かってしまいました。
これはもう、技術を知らない人がルールを作るとこうなる、という典型例でした。
映画を観ながら考えていたのは、「当時はなぜあそこまで問題視されたのか」ということです。結局のところ、偉い人や重要な機関が使い方を誤って情報漏洩してしまったから、という面が大きかったのではないでしょうか。
見どころ② 弁護士・壇俊光の奮闘と「正義」の形
映画のもう一つの柱は、金子を弁護する壇俊光弁護士の視点。
東出昌大が演じる壇は、正直ちょっと頼りなさそうに見えるところもありますが、その分、彼が信念を持って立ち上がっていく姿には心を打たれます。
「技術は中立だ。それをどう使うかは人間の問題だ」この言葉が、本作のテーマのすべてを物語っています。
技術そのものに善悪はないはずなのに、使い方を間違えた人がいたために、技術自体が悪者扱いされてしまった。そんな印象を改めて持ちました。
見どころ③ 日本社会の“保守性”を鋭く突く
「新しいものは怖いから規制しよう」
「意味がわからない技術は使わせない」
こういった反応は、日本社会において決して珍しいものではありません。
でもそれで未来を閉ざしてしまっては、若い技術者の芽を摘むことにもなる。
結局のところ、技術をうまく使えるようになればいいんでしょうけど、当時はそれができなかった。社会の側も、技術の側も、お互いに歩み寄れなかった部分があったのかもしれません。
今振り返ってみると、もっと建設的な議論ができたのではないかと思います。技術を規制するのではなく、適切な使い方を模索する方向に進めばよかったのに。
歴史的背景を押さえておこう:Winny事件とは?
Winnyとは、2002年に公開された日本発のファイル共有ソフト。当時としては画期的なP2P通信を用いた仕組みでしたが、その匿名性を悪用した著作権侵害が多発。
2004年、京都府警は開発者・金子勇を著作権法違反幇助の疑いで逮捕。
これは日本初の「ソフトウェア開発者が違法利用を助長したとして逮捕された」ケースでした。
その後の裁判では、2011年に無罪が確定するも、金子氏は2013年に心不全で急逝。享年42歳でした。
さいごに
「技術が社会に追いつかれなかった時代」を描いたこの映画は、今の時代にこそ意味がある。
技術に興味がある人だけでなく、インターネット社会の今と未来を考えるすべての人に観てほしい作品です。
オマエモナー(これ、懐かしくて言いたかっただけです)