アマプラビデ王の日々

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4デイズ・イン・イラク~彼らと分かり合える日は来るのだろうか

 

イラク戦争終結宣言から1年後の、2004年4月。シーア派の拠点カルバラに、平和維持軍として配備されたポーランド部隊。だが平和とは名ばかりで、現地では反米ゲリラとの泥沼の戦闘が続いていた。カリツキ大尉率いる40名は、カルバラ市庁舎を守る任務に就く。しかし敵の攻勢が開始され、部隊はたちまち数倍の民兵に包囲され激しい銃撃にさらされる。三日三晩不眠不休の戦闘が続き、そして弾薬も尽きかけた四日目の朝、敵は大規模な攻撃を仕掛けてきた……。Ⓒ2015 WFDIF, MIRAMAR FILM, AGORA SA, TELEWIZJA POLSKA S.A. CANAL+, STUDIO PRODUKCYJNE ORKA SP. Z O.O., POMERANIA FILM

 

2004年4月、イラク戦争終結が宣言されてからわずか1年後──『4デイズ・イン・イラク』(原題:Karbala)は、イラクの聖地カルバラで実際に起こったポーランド軍イラク民兵との激戦をもとにした戦争映画です。

 

個人的には観終わった後、感動とか共感というよりも、「戦争って結局こういうことなのか」という虚しさが、じんわりと染みてきました。

 

あらすじ|3日間不眠不休の攻防、そして4日目の朝にすべてが変わる

舞台はイラク中部の都市カルバラ。イスラムシーア派の聖地でもあるこの地に、平和維持軍として派遣されたポーランド軍40名が駐留していました。
しかし“平和維持”という言葉とは裏腹に、実態はゲリラ攻撃が頻発する緊迫した状況。
2004年4月、突如として数百名規模の武装民兵がカルバラ市庁舎を包囲し、ポーランド部隊は孤立無援の中で防衛戦を強いられます。

水も食料も尽きかけ、弾薬も底をつく極限状態。
そんな中、衛生兵として派遣されていた若い兵士が、自身の過去の“過ち”を乗り越え、戦場のただ中に立ち上がるのです。



実話がベース|知られざる“カルバラ包囲戦”の映画化

この戦闘は、実際に2004年4月3日〜6日の4日間にわたって起きた包囲戦を基にしています。
当時、カルバラ市庁舎はポーランド軍ブルガリア軍合わせてわずか80人程度で守られていましたが、襲いかかってきたのは数百人規模のマフディ軍(ムクタダ・アッ=サドル率いる民兵組織)。
過酷な状況での持久戦の末、なんとか死守したというポーランド軍の記録は、ポーランド国内では“知られざる英雄譚”として語られています。日本ではかなりマイナーでこのような戦闘があったことすら知らない人がほとんどでしょう。

 

登場人物たちと、少し感じた“見づらさ”

本作に登場する俳優たちは、ほとんどがポーランド人で、日本での知名度はほぼゼロ。
それが悪いわけではないのですが、キャラクターの顔や立場の区別がつきづらく、物語の流れを把握しにくい箇所が正直ありました。

 

中心となるのは若い衛生兵の青年
彼は初期の戦闘で命令不履行の罪に問われ、一時は拘束される立場になります。
ですが、その“動けなかった”という背景も、戦場未経験の若者であればごく自然な反応にも思えました。
後半で彼が再び前線に立ち、名誉を回復していく流れには、多少の演出臭さを感じながらも、やはり胸にくるものがありました。

 

民兵の描写が過激すぎて、かえって考えさせられる

この手の戦争映画ではありがちなのですが、敵となる民兵の描写がかなり一方的です。
市民を人質に取り、子どもを兵士にし、モスクを拠点にし、そして自爆攻撃まで──

たしかに“残酷な現実”を描くのは必要ですが、ここまでくると「宗教や信念ではなく、ただ破壊したいだけではないか」と感じてしまう場面もありました。
そう思ってしまう私の感覚こそ、戦争がもたらす分断なのかもしれません。

 

「分かり合えない」はずがない、でも──

映画の中で交わされる言葉のほとんどは、命令と怒声、銃声、そして祈り。
言語も文化も宗教も違う。
「わかりあえない」前提で人が殺し合っている構図は、やはり悲しく映ります。

でも、それでも本当に「永遠に分かり合えない」のか?
たとえ対話が無理でも、相手を人として見ることすら難しいのか?
映画を観終わったあと、そんな問いが残りました。

 

 

名もなき兵士の4日間

『4デイズ・イン・イラク』は、いわゆるエンタメ型の戦争映画ではありません。
誰かが英雄になるわけでもなく、壮大なドラマがあるわけでもない。
それでも、「目の前の命令を全うすること」に全力を尽くす兵士たちの姿は、静かに観る者の心に残ります。

 

自分がもしこの状況に置かれたら。命令に従えなかった若い衛生兵を責められるのか。
そして、撃たれる可能性があっても、誰かを救うために前に出られるのか。

 

言語も文化も宗教も違う人と戦争をしなくて済む時代が来るといいなぁ。