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ソウルガールズ~歌声に隠されたアボリジニの「盗まれた世代」

 

ソウルガールズ [Blu-ray]

ソウルガールズ [Blu-ray]

  • 発売日: 2014/07/02
  • メディア: Blu-ray
 

カントリーミュージックを歌っていたアボリジニの4人娘が、ひょんなことからソウル・ミュージックと出会い、ベトナム戦争の慰問シンガーとして有名になるというお話。グループの名前は「ザ・サファイアズ」。作中でも何度かグループ名を変えていて、その前のグループ名は、なぜか覚えにくく、カザフィ……、ファス……、なんだったかな。もう思い出せない。

華やかな音楽映画のようでありながら、この映画が深く描いているのは、アボリジニの人々が経験してきた差別と迫害の歴史です。特に、その中で最も恐ろしく、悲しい出来事の一つである「盗まれた世代」について知ることができただけでも、私にとっては非常に価値のある一本でした。

 

映画『ソウルガールズ』をざっくり紹介

2012年に公開された『ソウルガールズ』は、ウェイン・ブレア監督によるオーストラリア映画で、実話に基づいています。1968年のオーストラリアを舞台に、アボリジニの血を引く三姉妹ゲイル、シンシア、ジュリーと従姉妹のケイが、音楽の才能を見出され、ソウルグループ「ザ・サファイアズ」を結成します。ベトナム戦争下の兵士たちの慰問のため、危険な戦地へと向かう彼女たちが、差別や困難に立ち向かいながら成長していく姿を描くとともに、アボリジニの人々の歴史にも光を当てた作品です。

歌声が届かない差別の現実

映画の冒頭、三姉妹がカントリーミュージックのコンテストに出場するシーンは、あまりにも辛辣です。周りの反応はひどいもので、露骨に落選させられる。よくもあんな汚い言葉を平気で言えるな、と憤りを感じずにはいられませんでした。

しかし、それよりももっと恐ろしいのは、この映画が描く「盗まれた世代(Stolen Generations)」の話ですよ。これは、1870年代から1970年代にかけて、オーストラリア政府が、アボリジニの子供たち、特に混血の子供たちを親から強制的に引き離し、白人の家庭や施設に送り込んだ政策のことです。

 

「盗まれた世代」の衝撃的な事実

この「盗まれた世代」は、北朝鮮による拉致問題とほとんど同じ、いや、もしかしたらもっとひどいかもしれないと感じました。当時、オーストラリア政府は、白人を含めた海外からの居住者からの差別や略奪、暴力からアボリジニを守る目的もあったのかもしれません。それは当時の事情を鑑みれば、ぎりぎりセーフだったとしましょう。

 

しかし、問題なのはその次に起こったことです。彼らは、混血の子供たちの中に、アボリジニよりも肌の色が白い子供が生まれた場合、その子を親から取り上げ、強制的に孤児院などに送り込んだというのです。これはもう、明確な「拉致」ですよね。しかも政府が強制的に行っていたというのですから、恐ろしすぎます。

 

映画の中でも、従姉妹のケイが言いますよね。「私も同じ黒人、色素が薄いだけ」。全くその通りですよ。肌の色が薄いからといって、親から引き離すなんて、そんなことをする意味がどこにあるのか。黒も白も黄色も関係ないだろうに、と強く思いました。戦場で死にそうなのに、黒人の治療は受けないと騒ぐ白人兵士の姿も描かれ、この時代がいかに無茶苦茶で、今では考えられないような状況だったのかがよく分かります。

 

エンターテイメントの裏にある真実

映画の中には、姉妹の確執があったり、インチキプロデューサーとの恋があったりと、エンターテイメント的な要素も付け加えられていました。登場するソウルミュージックは、本人たちが歌っているわけではなく、プロの歌手の声を被せてあるのですが、イヤホンを通して聴くと、音楽のシーンは結構感動します。

 

ただ、個人的にはそういったエンタメ要素は本当にどうでもよかった。この映画を通して、アボリジニの人々が経験した迫害の歴史を知ることができただけで、私は十分満足です。当時、彼女たちが置かれた状況を考えると、何とも言えない、胸が締め付けられるような気持ちになりました。

 

この物語の流れ、どこかで見たことがあるなと思ったら、かつて観た『ドリームガールズ』ですね。物語の構成なんかもかなり似ているので、ある程度参考にしているのは間違いないでしょう。

 

アボリジニの美的感覚としては、ちょっぴり太めの方がキュートなんでしょうか。映画に登場する女性たちは、可愛いというよりは、たくましい感じの人が多かったですね。

ラストでケイがアボリジニの儀式で再び迎え入れられるシーンは、じんわりと心に響きました。ラブシーンよりも、こういう文化的なシーンがもう少し多い方が、個人的には好みでしたね。

 

華やかなソウルミュージックの裏で、アボリジニの人々が味わった悲惨な歴史、特に「盗まれた世代」の真実を浮き彫りにしています。差別や偏見が当たり前だった時代に、歌の力で自分たちの存在を証明しようとした女性たちの物語は、観る者に深い感動と問いかけを与えます。

人種差別や歴史問題に興味がある方、そして音楽の力に感動したい方には、ぜひ観ていただきたい一本です。

 

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