地平線のキックオフ~少年はたくましすぎる。あの性悪男は弱すぎる。
12歳のアドマスが住むスラムに、サッカー業界の大物フランツがやってきた。ボールさばきを見せ、プロ選手になるまたとないチャンス。だがフランツには近づくこともできない。アドマスは悪党グループにフランツを誘拐させ、自分が救い出してヒーローとなり彼に近づこうと目論むのだが...。
お涙頂戴の映画なのかなと思い少し気合を入れて見始めたのですが、意外とほのぼの系のお話でした。
冒頭にいきなり変なダンスを踊るおじさんが登場するので、これはもしかしてインド映画?これはダンスに期待できると思っていたのですが、町並みや人の感じがちょっと違う。
舞台はエチオピア。主人公の孤児アドマスはサッカー選手のメッシに憧れなんとかヨーロッパに渡りたいという夢を持っています。
しかし現実は過酷です。貧しい彼はペットボトルやビニール袋と靴下で作ったボールを作って練習をする毎日。皮のボールが蹴りたかった彼は市場で盗みを働きボールを作ります。
そんな彼の国に、サッカー連盟の理事のような白人の男がやってきます。
この理事がひどい男なのです。視察と言う目的でエチオピアに訪れるのですが、好感度を上げたいだけで、黒人の子供達をドワーフと呼んだり他人を意図的に傷つけたりとひどい悪人として描かれます。
そんな彼がサッカー少年アドマスに感化され少しずつ変わっていくお話なのですが、アドマスも結構ずるい。お国柄の違いなのですかね、自分の夢をかなえるためであれば多少他人を騙してもいいのでしょうか。
ともかく、いろいろとすったもんだはあるのですが、結果的にアドマスは自分の夢をこの理事である金持ち男にかなえてもらえそうになります。
ところがですよ、この男が突然死ぬんですよ。
あまりにも唐突な展開で驚いてしまいます。いや、普通死にそうだったら病院にいくでしょうに。。。
それからアドマスは心を入れ替えてまじめに学校に通い、チームを作ってサッカーを始めます。
彼が地平線を越えることができたのはずっと先になってしまうのですが、最後のアナウンスでアドマスが夢をかなえたことがわかります。
やや無理やりな設定が多かったのですが、ラストのこの展開はとてもすきです。
彼は結局プレイヤーとしては間に合わなかったということですよね。10年や20年では夢はかなえられないが、思い続けていればきっとかなうという思いが、しっかりこめられています。
アドマスの表情はとても豊かで特にあの笑顔は日本やアメリカなどでは見られない表情だと思います。
屈託のない笑顔と表現するのがふさわしい表情で、思わず手を差し伸べたくなるほどでした。