アマプラビデ王の日々

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天使にショパンの歌声を~天使は?歌声は?答えは出せず…

 

天使にショパンの歌声を(字幕版)

天使にショパンの歌声を(字幕版)

  • 発売日: 2017/07/07
  • メディア: Prime Video
 

「天使が歌って、感動的な合唱で奇跡が起こる!」みたいな、ベタだけど心温まるストーリーを想像していたのですが…。蓋を開けてみたら「あれ?天使はどこ?誰も歌わんのかーい!」って、嬉しい裏切りというか、ちょっと拍子抜けした部分もあったんです。ですが、クラシックなんて普段ほとんど聴かない私でも耳にしたことのあるショパンの美しい調べが散りばめられていて、全体的にはとても満足できた作品でした。

 

白銀に響く魂の音色

舞台は白銀の世界に佇む小さな寄宿学校。そこは音楽教育に力を入れ、数々のコンクール優勝者を輩出してきた名門校でした。しかし、2015年に修道院による運営見直しが決定され、採算の合わない音楽学校は閉鎖の危機に直面します。校長のオーギュスティーヌ(セリーヌ・ボニエ)は、この危機を打開しようと音楽の力で世論を動かす秘策を練ります。そんな中、転校してきた姪のアリス(エミリー・ビジオール)に天性のピアニストの才能を見出すものの、孤独で心を閉ざした彼女は一筋縄ではいかない問題児。この作品は、廃校の危機に瀕した音楽学校を救うために奔走する校長と、心を閉ざした天才ピアニストの少女の交流、そして音楽の力を描いた、希望に満ちた物語です。


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実話が織りなす、音楽学校の「現実」

本作は実話に基づいているようですが、そのせいか、物語には様々な情報や登場人物の思惑がちりばめられていて、最後までどこに焦点を当てて観たらいいのか、迷う部分もありました。おおよそのあらすじとしては、音楽教育を主軸にしている修道院が廃院の危機に陥り、その危機を音楽の力で回避しようとするものの、結局は回避できなかった、というお話。そうなんです、ラストシーンから察するに、結局は修道院が売却されてしまうんですよね。短い時間に多くの要素を盛り込もうとした結果、このような構成になったのかもしれません。もし実話であるならば、最後にその後のエピソードが少しでも語られていたら、もっと心に響いたかもしれません。

 

天才ピアニスト、アリスと校長の絆

まず、ピアノの才能は素晴らしいけれど、わがままし放題の転校生アリス。暖房代すら節約するような修道院で、いまどきの若者が満足できるはずもありません。しかし、道から外れそうになるアリスを必死に正しい道へと導こうとするオーギュスティーヌ校長との関係性は、見ていて非常に心温まるものでした。二人の間に芽生える絆が、物語の軸の一つになっています。

 

個性的な女性たちの葛藤

修道院の廃止を決めた“性悪おばあさま”も印象的でしたね。最後までそのイメージは変わらず、素晴らしいピアノ演奏を聴いても、なんのリアクションも示さない彼女の頑固さには驚かされました。

 

また、修道院の先生の中にも、変化についていけない方がいました。彼女も彼女なりに譲れないものがあったのでしょう。生徒には不人気だったかもしれませんが、どんな組織にも、ああいう存在は必要不可欠だと感じました。

 

他にも、伏線を張るだけ張っておいて、結局回収されなかったあのおばあちゃん(服装が変わった時に「まさか自殺!?」なんて思いましたが、元気で引きこもっていましたね)。そして、セレブの奥様。銀賞を取った自分の子供より優秀な子が転校してきたら、内心穏やかではないはずなのに、特に描写されることもなく淡々と物語が進んでいくのは、少し物足りなく感じました。個人的には、女同士のバトルが見られるのかと、ちょっと期待していたんですけどね。

 

『天使』と『歌声』の行方、そして残された謎

黒縁メガネの女の子が歌い始めたシーンは、この歌声が修道院を救うのかと期待したのですが、残念ながらそのシーンも数分で終わり、以降は登場せず。これは少し寂しすぎませんか?

そして、一番の謎として残ったのが、結局のところ「天使は誰だったのか?」ということ。このブログ記事を書きながら映画の内容を再考してみたのですが、結局のところ答えはわからずじまいです。私が知らない政治的な背景や歴史が、この物語には隠されているのかもしれませんね。