奇跡の2000マイル~人生は旅であるとはよく言ったものだ。
砂埃が舞うオーストラリア中央部の町アリス・スプリングス。うまくいかない人生に変化を求め、家族や友だちから離れて、たったひとり都会からこの町にやってきた24歳の女性ロビン。彼女がこの地を訪れた目的は、とてつもなく広大な西部の砂漠地帯を踏破し、インド洋を目指す冒険の旅に出ること。町のパブで働きながら牧場でラクダの調教を学び、旅の準備を整えたロビンは、荷物持ちとなる4頭のラクダと、いつも心の支えになってくれる愛犬を引き連れて、いよいよ町を出発。圧倒的な大自然のなかを、自らの足でしっかりと大地を踏みしめて一歩ずつ前進していく。やがてこの波乱に満ちた旅の道程で、ロビンは一生の宝物になるような出会いと経験を重ねていくのだった…。
オーストラリアの砂漠をラクダと犬を連れて徒歩で横断するという無謀な女性がおりまして、その人(ロビン・デヴィッドソン)の自伝「Tracks」を元にした映画です。
彼女がオーストラリアのアリススプリングスを出発したのが1977年。
50年前とまではいえませんが、結構昔です。
映画では旅立ちの準備からゴールするまでの期間が描かれ、オーストラリアのきびしい自然。それからアボリジニのこと。
出会いと別れ、戸惑いに絶望と単調になりがちな旅行記ですが、実にいろいろな仕掛けがされておりました。
作中にもありましたが、ラクダに荷物を積んで、30km歩いて、荷物を下ろす。
で、次の日目が覚めて、いつもと同じように準備してただ歩く。
毎日毎日その繰り返し。一番大変なのは長期間モチベーションを保つことなんだろうなと思います。
過酷な一人旅を見ていると、悲しさやつらさ、切なさを感じ、人間って何で生きているんだろうとしみじみと思ってしまう。
だけども同じところをぐるぐると回るだけで答えなんて出ない。
彼女を通して、自分はいったい何者になりたいのかを見つめなおすことができる作品です。
全体的には面白かったのですが、いくつか気になる点がありました。
まずは、彼女の母親に対する思いです。映画のなかで簡単な説明はあったものの、この旅に、彼女自身にいったいどのような影響を与えているのか。
冒頭、なぜかさかさまのシーンから始まるのですよね。もしかしたらスマホを逆にもってしまったのかと思ってしまいました。
これらのシーンに母親のことがちりばめられていると思っているのですが、結局のところ最後までわからず。
そしてこの映画で一番の疑問は2000マイルと書いているのに、1700マイルだったということです。
1700マイルでもすごいことですが、単にキリがいいという理由で2000マイルを使ったのだろうか。
彼女が途中で目的地を変えたから、300マイル減ったのでしょうか。つまり、彼女は当初の目的を果たせなかった。
確かに、映画を見るとあのカメラマンの助言どおり目的地を変更して、ゴールとしたと読み取れます。肉体的にも、精神的にもあそこが限界だった。
つまり、ストリキーネが落ちていたのは偶然ではなく必然だったと。
砂漠のど真ん中にストリキーネが落ちているものだろうかとちょっと思いましたが、このあたりは彼女が旅をやめるための演出だったのかもしれません。
旅も人生も同じです。毎日毎日同じことの繰り返し。
だけどある日突然何の前触れもなしにひどいことが起こる。自分の思い通りには決して進まない。
まあ、仕方ない。