毎日同じことの繰り返し…それでも歩き続けた女性の物語
今回ご紹介する『奇跡の2000マイル』は、オーストラリアの広大な砂漠を、4頭のラクダと愛犬を連れて徒歩で横断するという、無謀な冒険に挑んだロビン・デヴィッドソンという女性の実話に基づいた映画です。彼女が旅立ったのは1977年。今から約50年前の出来事です。
映画は、旅の準備からゴールまでの道のりを丁寧に描いており、オーストラリアの厳しい自然、アボリジニとの出会い、そして旅の途中で起こるさまざまな出来事が、単調になりがちな旅の記録に彩りを与えています。毎日毎日、ラクダに荷物を積んで30km歩き、荷物を下ろす。そして次の日もまた同じことを繰り返す。一番大変なのは、この長期間にわたるモチベーションを保つことなんだろうな、とつくづく感じましたね。
映画『奇跡の2000マイル』とは?
2013年に公開された『奇跡の2000マイル』(原題:Tracks)は、ジョン・カラン監督が手がけた実話に基づくロードムービーです。オーストラリアの砂漠を単独で横断するという壮大な旅に出た女性ロビン・デヴィッドソン(ミア・ワシコウスカ)の自伝を映画化しました。過酷な自然の中で孤独と向き合い、自らの人生を見つめ直していくロビンの姿を通して、冒険と成長、そして人間という存在のあり方を描いた作品です。
見どころ:絶望の旅路と、自分自身への問いかけ
過酷な一人旅を見ていると、悲しさや辛さ、切なさを感じ、「人間って何のために生きているんだろう」としみじみと考えてしまいます。だけど、同じところをぐるぐる回るだけで答えなんて出ない。ロビン・デヴィッドソンは、この旅を通して、自分はいったい何者になりたいのかを見つめ直したのでしょう。
この映画にはいくつか気になる点がありました。まずは、彼女の母親に対する思い。映画の中で簡単な説明はありましたが、この旅にどのような影響を与えているのか、最後まで明確にはわかりませんでした。冒頭、なぜか逆さまのシーンから始まるのですが、もしかしたらこのシーンに母親との関係が隠されているのかと深読みしてしまいましたが、結局わからずじまいでしたね。
そして、一番の疑問はタイトルにもなっている「2000マイル」という距離です。実際の彼女の旅は1700マイルだった、という話を聞きました。1700マイルでもすごいことですが、なぜ2000マイルとしたのか。単にキリがいいからでしょうかね。もしかしたら、彼女は当初の目的を果たせず、途中で目的地を変更したから、という理由で300マイル減ったのかなぁ。確かに映画を見ると、あのカメラマンの助言通り目的地を変更し、ゴールとしたと読み取れます。肉体的にも、精神的にもあそこが限界だったのでしょう。
旅と人生は同じ
旅も人生も同じです。毎日毎日同じことの繰り返し。だけどある日突然、何の前触れもなくひどいことが起こる。そして、自分の思い通りには決して進まない。砂漠のど真ん中に猛毒であるストリキニーネが落ちていたのは、偶然ではなく必然だったのかもしれない。肉体的にも精神的にも限界だった彼女が、旅をやめるための演出だったのかもしれませんね。
まあ、人生ってそういうものですよね。仕方ない。