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真珠の耳飾りの少女~恋に落ちたからこそ、耳を貫く痛みを受け入れたのだ

 

真珠の耳飾りの少女 (字幕版)

真珠の耳飾りの少女 (字幕版)

  • スカーレット・ヨハンソン
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絵画を題材にした映画を観るのはもしかしたら初めてかもしれない…。
フェルメールの名画『真珠の耳飾りの少女』。作者やタイトルを知らなくても、この少女の横顔はどこかで必ず目にしたことがあるはずです。

 

2003年公開の映画『真珠の耳飾りの少女』は、この名画が生まれた背景を想像して描いた作品。絵のモデルは誰だったのか――その答えとして「使用人の少女」という仮説を採用し、物語の中心に据えています。主演はスカーレット・ヨハンソン。まるで絵から抜け出したかのような彼女の横顔に、観客は思わず息をのみます。

 


映画をざっくり紹介

舞台は17世紀のデルフト。画家フェルメールの家に仕えることになった使用人グリート(ヨハンソン)は、厳格な家庭の中で孤独を抱えながらも次第に絵画の世界に惹かれていきます。彼女が目にするのはフェルメールの創作の秘密、そして禁じられた感情でした。


禁断の恋とピアスの意味

この映画で一番印象に残ったのは「真珠の耳飾り」をつける場面です。
身分の低い使用人が、奥方の宝飾を身につけるなど本来はありえないこと。家庭の秩序を乱し、奥方の誇りを踏みにじる行為でした。

 

それでも彼女は、フェルメールの絵を完成させたいという思いと、胸に芽生えた感情に逆らえなかった。耳に穴をあけ、耳飾りを受け入れる行為は、ただの準備ではなく、少女が大人へと歩みを進める通過儀礼のように描かれています。

 

耳を貫く痛みを受け入れたのは、すでに恋に落ちていたからだ。直接的な関係は描かれないのに、観客はその沈黙の中に「禁じられた思いの重さ」を感じ取るのです。

 


名画に秘められた謎

美術史の研究では、この絵の背景は現在は黒に見えますが、当初は深い緑色だったことがわかっています。黒化によって神秘的な印象が強まりましたが、本来はもっと明るく瑞々しい雰囲気だったのです。

 

また、少女の眉が描かれていない点についても議論があります。退色、当時の美意識、画家の意図など諸説あり。結果的に「無垢」と「妖しさ」の二面性を同時にまとわせることになり、この映画のテーマとも響き合っています。

 

こういった背景を前提にこの映画を見ると、スカーレット・ヨハンソンの演技、メイク、それからストーリーが何倍も楽しめます。

 


スカーレット・ヨハンソンの存在感

ヨハンソンはこの役で大きな評価を得ました。セリフは多くないのに、視線や沈黙の演技だけで観客に「物語を想像させる力」を発揮する。フェルメールとグリートの関係が肉体的には決して交わらないのに、観客はその危うさに惹きつけられてしまう。

 


名画と映画が重なる瞬間

少女の口が半開きであること、思ったよりも艶やかな唇。耳に輝く一粒の真珠は黒っぽく見える。絵の前に立つと、映画の物語が自然と頭に浮かびあがります。
史実は謎に包まれたままですが、その空白を埋めるように映画は観客に「もしも」を投げかけてくる。

名画が放つ永遠の魅力と、映画が描いた禁断のロマンスでした。