1941年、前年にソ連との“冬戦争”に敗れ、領土の一部を失ったフィンランドはソ連から領土を取り戻すためにソ連に進攻、“継続戦争”が勃発する。この戦争でフィンランドは400万の人口に対して50万の軍隊を組織、さらには近隣諸国で唯一ソ連と敵対しているナチス・ドイツと手を組み、強大なソ連相手に戦いを挑む。フィンランド軍のある機関銃中隊に所属する4人の兵士、ソ連に奪われた農地を取り戻したい熟練兵ロッカ(エーロ・アホ)、婚約者を残し最前線で戦う将校カリルオト(ヨハンネス・ホロパイネン)、中隊を率いる部下思いの隊長コスケラ(ジュシ・ヴァタネン)、そして心優しい兵卒ヒエタネン(アク・ヒルヴィニエミ)。それぞれの守りたいもの、帰りたい場所のためにソ連との旧国境も超えて戦い続けていく。
今回は、ドイツやノルウェーを舞台にした北欧の戦争映画『アンノウン・ソルジャー 英雄なき戦場』を観てみました。
この映画、いわゆる「優秀な兵士が無双する」といったストーリーではありません。どこにでもいるような、ごく普通の兵士たちが主役。そこがまず、一般的な戦争映画とは少し違う点ですね。
しかし、残念ながら、物語全体を通して目新しさがなかったのが正直な感想です。この国でも、いや、どの国でも見られる「無能な上司と優秀な部下」という構図が描かれています。そして、その無能な上司の上には、さらなる無能な上司がいて…。
となると、一番トップにいる人間は、相当な「ドアホ」なんだろうなと。国を挙げて戦争を始め、人間同士で殺し合えと命令するくらいですから、その知能はお察し、といったところでしょうか。
偉い人たちからすれば、末端の兵士たちの命なんて価値のないものなのかもしれませんません。しかし、彼らにも家族がいて、それぞれの生活があるんです。それはどの国でも同じなのに、なぜそうまでして争いを続けるのか、虚しくなってしまいます。
末端の兵士の状況を伝えるというテーマを考えると、このようなストーリー展開になるのは致し方ないのかもしれません。ただ、もう少しこの地域ならではの特色や、この作品ならではのひねりが欲しかったな、という物足りなさが残りました。
唐突なロマンスに疑問符?
気になったのが、ちょこっとだけ登場する色恋の話です。描写があまりにも省略されすぎていて、正直なところ「?」が浮かびました。
なぜあの美しい女性は、初対面の彼といきなりキスをしたのでしょう? しかも人前で。そして、あの踊りも一体何だったのか? 何か意味のある踊りだったのでしょうか。
あの出来事が、その後の展開につながるのは理解できます。ですが、あまりにも唐突すぎて、あの女性がただのビッチとしか思えませんでした。兄弟なのか従妹なのか、ただの友人なのかわかりませんが、彼女たちの目の前でも平気でやってしまうのですから。
これは、男女の関係さえもが切羽詰まった状況を表したかったのでしょうか。うーん、もう少し丁寧な描写か、あるいは何か一捻りがあれば、もっと感情移入できたのにな、と感じずにはいられませんでした。
全体としては、戦場のリアルな状況を描こうという意図は伝わってきましたが、個人的にはもう少し踏み込んだ深みや、独自性が欲しかった作品です。