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オートマタ~ロボットに心は宿るのか?近未来SFが描く人間の崩壊と再生

 

オートマタ(字幕版)

オートマタ(字幕版)

 

近未来の地球、砂漠化した世界を背景に「ロボットに心は宿るのか?」というSFらしいテーマを掲げた『オートマタ』。映像の雰囲気は悪くなく、設定も期待を持たせるものでした。しかし実際に観てみると、どうにも消化不良。期待したほどの深みも緊張感もなく、終わった後に「結局これは何を描きたかったのか?」と首をかしげてしまう作品でした。

 

映画をざっくり紹介

『オートマタ』(2014年)はアンソニオ・バンデラス主演の近未来SF映画。人類を支えるロボット=オートマタは絶対ルールに縛られています。しかしそのルールが破られた時、人間とロボットの関係に大きな波紋が広がる…というのが基本的な物語です。

設定は面白いがもう一息

映画の肝となる2つのプロトコル(制限事項)は次のようになっています。


・命を奪ってはならない(生命体を傷つけてはならない)
・自分を含めたロボットの改造を行ってはならない


シンプルでわかりやすいプロトコルで、確かにドラマを生み出せる要素でした。ところが実際のストーリーでは、この縛りをどう乗り越えるのかが曖昧で、説明も不十分。しかも「人類を超える知能を持つロボットが作ったから絶対破れない」という説明をしておきながら、アンドロイドのリーダー格が銃であっさり倒されるのは説得力に欠けました。世界観の一番肝心な部分が軽く見えてしまったのは残念です。

感情移入できないキャラクター

それから娼婦役のロボットがかわいくない。私が大好きな映画であるエクスマキナもはじめはかわいいと思えないけれども少しずつ気持ちが変えられてしまい。。。という感じでしたが、これは最初から最後まで感情移入できなかった。


あえてあの顔にしたのでしょうが、母性のようなものを持つものとして進化するのであればもう少し人間に寄せた造形にして欲しかったなと思います。

人間側のドラマも弱い

人間たちの立ち位置も不鮮明でした。味方なのか敵なのか曖昧な人物が多く、斜視のボスがカーネル(中枢プログラム)の存在を知りながら隠す理由も説得力に乏しい。「秘密が漏れると困るから主人公を消す」という構図はわかりますが、それなら「人間対AIの全面対決」に舵を切った方がずっと盛り上がったはずです。

俳優たちについて

アンソニオ・バンデラスは疲れ切った保険調査員を淡々と演じています。雰囲気は悪くないものの、彼の存在感を持ってしても映画全体の不明瞭さを補うことはできませんでした。妻役のメラニー・グリフィスがロボットの声を担当しているのは面白い仕掛けですが、やはり映画の核心にはつながらない小ネタ止まり。

まとめに代えて

『オートマタ』は「映像の雰囲気」と「設定の骨格」までは良かった。でもその先を掘り下げることなく、テーマもアクションもどっちつかずで終わってしまった印象です。AIと人間の関係を描いた映画は他にも名作が多い中で、どうしても中途半端さが目立ちます。観る価値がゼロとは言いませんが、正直『エクス・マキナ』や『ブレードランナー』を先に観た方が満足度は高いでしょう。