明日から休みと思うとなんとなく気分が浮かれて、ワーッと楽しい映画とか火薬量多めの映画を観たくなるのは私だけでしょうか?爽快にゾンビを倒しまくったり、ド派手な大爆発があったりするやつ。そんな気分で今回選んだのが、『ラン・ハイド・ファイト』です。
タイトルからして、てっきりゾンビものかなと勝手に想像していたんですが、ちょっと違いました。アメリカで深刻な社会問題となっている「学校の銃乱射事件」を取り扱ったものでした。
映画『ラン・ハイド・ファイト』とは?
2020年に公開された『ラン・ハイド・ファイト』は、高校で発生した銃乱射事件に巻き込まれた女子高生が、自らの機転と勇気で事態に立ち向かうサスペンススリラーです。監督はカイル・ランキン。時間は約109分。主役のゾーイを演じるのはイザベル・メイさん。私はこの映画ではじめて彼女を知りました。ちょっと気になりますね。
見どころ:絶望の中で「立ち向かう」ということ
この映画のストーリーは比較的シンプルで分かりやすいです。主人公は家庭の事情で学校に馴染めずにいる女子高生、ゾーイ。そして、同じように学校に居場所を見つけられなかった数名の少年たちが、銃乱射事件の犯人となります。
特に印象的だったのは、映画全体を貫く「立ち向かう」という表現です。これは単に犯人と戦うという意味だけではないように感じました。学校に馴染めず、周囲との間に壁を感じていたゾーイが、この極限状態の中で、まさに自分自身の日常、そしてこれから訪れる人生そのものへも立ち向かっていく。そんなメッセージが込められているように思えましたね。
「プロム」が象徴する、スクールカーストの現実
アメリカの高校生活の象徴ともいえる「プロム」が、物語の背景にありました。陽気なパーティーに心躍らせる生徒たちがいる一方で、陰キャな彼らにとっては、それはもう厄介でつらいイベントだったでしょう。かつて中国では11月11日が「独身の日」として、若者たちの間で自虐的な意味合いで盛り上がったと聞きますが、これに通じるものがあるのかもしれませんね。日本でもバレンタインデーがそうですが、最近は本来の意味が薄れて、友チョコなんてのもありますから、時代は変わるものです。いずれにせよ、恋人関連のイベントというのは、陰キャにとっては見て見ぬふりをしたくなるものです。
爆発力がもう一息欲しかった
作中では、警察の対応がややポンコツに描かれているのが、個人的には気になりました。緊迫した状況下での連携不足や判断ミスは、観ていて「おいおい」と思う場面も。
そして、父親の行動、そして衝撃的なラストシーン。これは正直、アウトでしょう。ああいう結末は、倫理的に許されるべきではない、というのが私の個人的な感想です。せめて犯人を捕まえ、その動機を徹底的に調べるべきだったんじゃないかと、もやもやが残りました。
それから週末に観るにはもう少し爆発力が欲しかった!車の爆破シーンも、もう少し派手にドン!といってくれてもよかったのになぁ、なんて思ってしまいましたね(笑)。
社会問題を描く映画の「是非」
この『ラン・ハイド・ファイト』は、私の週末の「景気のいい映画」という選択とは、全く異なる方向の作品でしたが、社会問題として存在する「銃乱射事件」に、一人の女子高生が立ち向かう様子を、エンターテイメント化したものです。
この映画を観ていて、ふと疑問に思ったことがあります。アメリカでは学校での銃乱射が深刻な社会問題で、多くの被害者が出ているわけですよね。そういうテーマを扱う映画は、被害者の方々にとってのトラウマを考えると、制作が禁じられたりはしないのだろうか、と。これは「嫌なら見るな」というスタンスなんでしょうか。
この映画でもほとんどの生徒が生還するのですが、亡くなった生徒とその家族についてはほとんど考慮されていません。
私がそういうことを気にしすぎるのかもしれませんね。しかし、これだけリアルに描かれると、その是非についても考えてしまいます。こんな風に見てしまうとこの作品の受け取り方が大きく変わってしまいますので、エンターテイメントの一つとしてお楽しみください。