アマプラビデ王の日々

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魔女と呼ばれた少女~荷馬車に揺られるのは子牛だけじゃない

 

 「私はコモナ。14歳。これから生まれるあなたに、"魔女"と呼ばれたママのすべてを話したい。死と隣り合わせの日々の中で、私は彼と出逢ったの」平和な水辺の村から拉致され、反政府軍の兵士となったコモナは、死んだはずの人たちに導かれ、全滅必至のゲリラ戦から生還する。亡霊を見...

タイトルから、『西の魔女が死んだ』みたいな話かなと気楽な気持ちで見始めたのを
後悔するくらい悲しい内容でした。

 

主人公となった少女の名はコモナ。この子、映画を通してずっと孤独なのです。

 

その孤独の出発点は自分が生まれ育った小さな村。ある日武装集団がやってきて、大人達を一掃してしまいます。彼らの狙いは少年・少女。

 

力で簡単に従わせられる子供たちを兵士として使うためにこの村を襲ったのです。

 

つかまったコモナに下された最初の命令は、自分の両親を銃殺すること。
もしそうしなければナタを使ってなぶり殺しにすると。

 

当然コモナは躊躇しますが、親ならこういうに決まっていますよね。
「遠慮なくパパとママを撃て。そしてお前は生きろ。」

 


そのまま何十時間も歩かされ、戦いの最前線に。そこでは、わざと敵の標的になるように行動させられるのですが、コモナは生き延びた。

 

この話が有名となり、コモナは、敵の弾があたらないとか、敵を事前に見つけることができる魔女としてゲリラ軍に重宝されるのです。

 

しかし、これはたまたま運が良かっただけ。
苦しい戦いの中ではこういったウソで兵士を鼓舞でもしないとやってられないのです。

 

一方のコモナはうれしいとか、悲しいとかそんな感情はどこかいってしまったのでしょう。両親を殺めてからはたくさんの白い亡霊達が見えるようになります。

 

怖いというよりかは、さびしい。こんなにたくさんの人に囲まれているのに自分が自分じゃないようなそんな印象を受けました。

 

それからも事件は続くのですが、ちょっと省略。結婚して、夫が殺害され、誰だか知らない司令官の情婦になり、子を宿す。すっ飛ばすとこんな感じですが、これもほんと悲しかった。

 

そして、肉屋のおじさんの家で平穏無事で暮らせる毎日がおとづれるのですが、彼女の心の傷は相変わらず深いまま。

 

陣痛が始まると彼女は一人で船を漕ぎ肉屋のおじさんの家をとびだします。

 

誰も知らない地で一人で出産をすることを決意するのです。
このシーンはつらかった。

 

肉屋のおじさんのところにいれば安心して生むことができたでしょう。

 

だけども彼女はあえて一人の道を選んだのです。
それはおそらく産んだ子を愛せる自身がなかったから。

 

最愛の両親を自分の手で殺し、それから愛した男も殺されてしまった。
おなかにいるのは陵辱された相手の子。
出産後、もし母性を感じなければそのまま川に流すつもりだったに違いありません。

 

だがやはり母性が勝ちました。
すぐに赤ちゃんを清潔な布でくるみしっかりと抱っこをします。

 

そして、自分が母親になったということを伝え、自分を最後まで悩ませる両親の亡霊に区切りをつけるため、生まれたばかりの子供と一緒にふるさとに戻ります。

 

せめてお墓を思うのですが、両親の骨は見つからず、かろうじて母親が使っていた髪留めのようなものと父親のYシャツを見つけます。

 

足元の砂を少しだけ掘って、それらの遺留品を埋める。

 

このシーン。さびしすぎますよ。両親を埋葬できてほっとした?そんな気持ちにはなりませんでした。
無理やり自分の気持ちに折り合いをつけ、もう過去のこととして割り切って歩いていくしかないというあきらめとしか感じませんでした。

 

さびしいコモナ。最後にトラックに乗って横になるシーンもなんか物悲しい。

 

横になって目を瞑る彼女に、少しでも平穏な日常が戻ってくれればいいな。

 

少年・少女兵の話は本当に悲しい、救いようがない。
紛争地に立つ彼、彼女らは、いったいどんな思いで銃を握っているのだろうか。