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魔女と呼ばれた少女~荷馬車に揺られるのは子牛だけじゃない

 

魔女と呼ばれた少女 [DVD]

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タイトルから、「西の魔女が死んだ」みたいな話かなと、気楽な気持ちで観始めたことを後悔するくらい、悲しい内容でした。今回ご紹介する『魔女と呼ばれた少女』の主人公コモナは、映画を通してずっと孤独なんです。

 

その孤独の始まりは、平和な水辺の村が武装集団に襲われたこと。大人たちは一掃され、彼らに従いやすい少年少女が兵士として連れ去られます。コモナに下された最初の命令は、自分の両親を銃殺すること。断ればナタでなぶり殺しにすると脅され、両親は「遠慮なく撃て、そしてお前は生きろ」と彼女に告げるんです。このシーンは、本当に胸が張り裂けそうになりました。

 

映画『魔女と呼ばれた少女』とは?

2012年に公開された『魔女と呼ばれた少女』(原題:War Witch)は、キム・グエン監督が手がけたカナダ映画です。アフリカの紛争地を舞台に、反政府軍の兵士として連れ去られた14歳の少女コモナ(ラシェル・ムワンザ)が、凄惨な現実を生き抜く姿を描きます。死んだはずの人々が見えるという彼女の能力が「魔女」として重宝される一方で、彼女は愛、裏切り、そして再生という、過酷な運命に翻弄されていきます。


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魔女と呼ばれた少女の、あまりにも残酷な現実

両親を殺害した後、コモナたちはそのまま何十時間も歩かされ、戦いの最前線に。そこでは、わざと敵の標的になるように行動させられるのですが、コモナは生き延びた。この話が有名となり、コモナは、敵の弾があたらないとか、敵を事前に見つけることができる魔女としてゲリラ軍に重宝されるのです。

 

しかし、これはたまたま運が良かっただけ。
苦しい戦いの中ではこういったウソで兵士を鼓舞でもしないとやってられないのです。


それからコモナにはたくさんの白い亡霊が見えるようになります。怖いというよりは、寂しい。たくさんの人に囲まれているのに、自分が自分じゃないような、そんな印象を受けました。その後も、彼女の人生は壮絶です。結婚した夫は殺害され、誰だか知らない司令官の情婦になり、子を宿す。本当に悲しい。

 

平穏な生活を送るチャンスを手放した理由

肉屋のおじさんの家で平穏な生活を送るチャンスが訪れますが、彼女の心の傷は癒えていませんでした。陣痛が始まると、彼女は一人で船を漕ぎ、肉屋のおじさんの家を飛び出します。

 

誰も知らない地で一人で出産することを決意するんです。肉屋のおじさんの元にいれば安心して産めたでしょうに、なぜ彼女は一人を選んだのか。それは、おそらく産んだ子を愛せる自信がなかったからでしょう。

 

最愛の両親を自分の手で殺し、愛した男も殺され、お腹にいるのは陵辱された相手の子。出産後、もし母性を感じなければ、そのまま川に流すつもりだったに違いありません。 しかし、やはり母性が勝ちました。生まれたばかりの赤ちゃんを清潔な布でくるみ、しっかりと抱っこをする。そして、自分が母親になったことを伝え、自分を最後まで悩ませる両親の亡霊に区切りをつけるため、子供と一緒に故郷に戻ります。

 


「諦め」の埋葬と、銃を握る少年少女の気持ち

故郷に戻ったコモナは、両親の骨は見つからず、母親の髪留めと父親のYシャツの遺留品を見つけます。足元の砂を少しだけ掘って、それらを埋める。

このシーン、寂しすぎますよ。両親を埋葬できてホッとした、そんな気持ちにはなりませんでした。無理やり自分の気持ちに折り合いをつけ、もう過去のこととして割り切って生きていくしかない、という諦めしか感じられませんでしたね。

 

さびしいコモナ。最後にトラックに乗って横になるシーンもなんか物悲しい。横になって目を瞑る彼女に、少しでも平穏な日常が戻ってくれればいいな、と願わずにはいられません。

 

少年少女兵の話は本当に悲しく、救いようがありません。紛争地に立つ彼ら、彼女らは、一体どんな思いで銃を握っているのでしょうか。