「誰にでも忘れられない恋愛がある」…まさしく、この映画が描いているのはそんな普遍的なテーマです。これは、とあるカップルの出会いから別れまでを、少しずつ過去へ遡る独特な時間軸で描いた恋愛映画。誰もが経験したことのある「あんなこと、こんなことあったな」という記憶をちょっと思い出す。観る者の心に温かく、時に切ない感情を呼び起こします。
時を遡るカレンダー、そして記憶の旅
この映画を観て、私が一番「おっ!」と思ったのが、冒頭から登場するカレンダーの演出なんですよ。パッと見は「ん?この表記は何だ?」って思うような、ちょっと見慣れない「曜日-日-月」の順で、その下に時間が表記されています。これが何度か画面に現れるうちに、ある特定の一日を指していて、しかもそれが少しずつ過去へ遡っていることに気づくんです。この見せ方が映画を見ながら気づくという点が、すごく心に残りました。
普通、映画って時系列に沿って進むものが多いじゃないですか。でも、この作品は、二人の関係が終わる瞬間から始まって、少しずつ出会った頃へと逆戻りしていく。実際の人生ではありえない「時間の逆行」を、こんなに自然に、そしていい感じ描くなんて、本当に見事ですよ。
付き合ったばかりの頃は、まさか別れるなんて微塵も思わない、そんな輝いていた日々が、少しずつ、でも確実に変化していく様子が、少し悲しい。そして最後にたどり着くのは、おそらく現在。それぞれが別の道を歩んでいるけれど、ふと「ちょっと思い出した」…そんな余韻がたまらないんですよね。
記憶を彩る音楽と、あの「偶然の出会い」?
映画を観終わってから調べて知ったのですが、この作品ってロックバンド「クリープハイプ」の楽曲がベースになっているんですね。道理で、劇中に流れる歌が、二人の物語をそっと見守るように寄り添っているわけだ。彼らの歌をよく知っている人なら、もう冒頭から「たまらない!」ってなる一本でしょうね。
そして、私も一つだけ気になったのが、ミュージシャンと主人公の男性のやり取り。「どこかでお会いしましたか?」っていうあの会話。印象的だったのは、あの汚れた裏通りで、一人のギタリストが路上で演奏していたシーン。まるでBGMのように流れていたんですが、あれって、あのミュージシャンですよね?だとしたら、ただの偶然じゃなくて、なんだか運命的なものを感じますよね。
誕生日という特別な日と、ささやかな贈り物
この映画を観て改めて感じたのは、やっぱり誕生日のイベントって、人の記憶に強く残るもんだなぁってこと。高価なものじゃなくても、心のこもった小さなプレゼントや、二人で囲むケーキ。特にケーキって、不思議と特別感がありますよね。別れてしまった後も、そんなささやかな記憶が、ふとした瞬間に心によみがえる。過去は美化されてしまうものだけど、「こうすればよかったかな」「ああすればよかったかな」なんて、誰しも一度は思ったことがあるんじゃないでしょうか。
映画の後は記憶の片隅をそっと掘り起こしてみましょう
『ちょっと思い出しただけ』は、派手な展開があるわけじゃないけれど、観終わった後にじわーっと心に残る、そんな映画です。あの頃にはもう戻れないって頭ではわかっていても、たまには思い出に浸って、ちょっと感傷に浸りたい。そんな気持ちにさせてくれる一本でした。
いろいろな恋愛映画はあるけれども、たまにはこんな恋愛映画で、しんみり?じんわり?する時間もいいですね。