レベッカ・ファーガソン主演。1950年モスクワ。カチャは冷戦状態にあったアメリカのスパイとして活動していた。ある時、彼女はロシア政府で務める男、アレキサンダーに近づき情報を盗むことに。順調にスパイ活動を遂行していくが、彼の優しさに触れ禁断の恋へと落ちていってしまう。
米ソ冷戦が舞台のスパイ物と思って油断してしまいました。これは悲しき愛の物語ですね。
スパイの彼らは反共産主義、つまりアメリカ側の味方で自国を敵として戦っています。
女エージェントであるカティア(レベッカ・ファンガーソン)が、ソビエトの外交官に近づきます。
目的はもちろん機密情報を盗むため。
ソビエトの外交官は愛ゆえに疑いの目を向けられなかったのかもしれません。やすやすとエージェントに情報を盗まれ続け、それがソビエト側にもばれてしまいます。
外交官もスパイのカティアも捕まれば終わり。そこで、カティアは夫である外交官を亡命させる決心をします。
この亡命シーンが冒頭に描かれ、伏線を残すだけ残して、本編がはじまります。なぜ外交に妻が関係あるのか、それから彼の涙はなんなのか。そしてなぜ人々を裏切るような形で逃げなければならなかったのか。
物語が進展するにつれ、少しずつそのあたりが明らかになり、ラストでカティアの結末も描かれます。
ひっそりどこかで生きていて欲しいとは思いませんでした。思い出は思い出のままでとどめておくのが一番なのです。年老いくたびれてしまったカティアを見るのは嫌だった。
カティアが夫に伝えた、「私は大丈夫。あとから合流する」というのはまったくのウソ。何のアテもないまま彼女は寒い冬の街をさまよい、最終的に上司に助けを求めたのです。
この上司にはすでに組織の手が伸びており、彼女は夫と別れてすぐに2つの銃弾で命を落としていたのです。
カティアを撃った彼も彼女を愛していたはず。もしかしたらこの世界が平和になったら自分の気持ちを伝えるつもりだったのでしょうか。だとしても悲しすぎる。
カティアの夫への愛は真実でしたが、私はカティアの上司である彼の愛も真実だったと思います。
彼はあれからずっと自分を愛した人の命を奪った罪を背負って生きていたのです。
後生大事に、彼女の荷物を持っていたのは亡命した夫に渡すためではなく、自分自身のためではないのかと思ってしまいました。
今回のヒロインで2役をこなすのはレベッカ・ファンガーソンさん。この人は今まで私が知っているタイプとは異なる雰囲気の超絶美人ですね。
私はカティア時代のほうが好きです。
こんな素敵な人がそばにいてくれたら機密情報くらい安いものと思ってしまうかも。
ソビエトの厳しい冬の風景もこの映画の雰囲気を下支えし、悲しさが心の奥までしみこんでしまいそうな1本でした。