アルカディア~カルト教団のお話かと思いきや、ループものだった
カルト集団とも言われる自給自足の村“アルカディア”を10年前に脱走し、今は街で暮らしているジャスティンとアーロンの兄弟。しかし幼い頃から特殊な生活をしていた2人は、世間にうまく馴染めず、友人も恋人も居ない。そんなある日、兄弟は再び村を訪れる決心をする。不思議なことに、アルカディアの住人の外見は10年前とまるで変わらないように見えた。やがて2人は次々と村で起こる超自然的な出来事を目の当たりにする。(C)2017 Arcadian Film
なんともいえない怪しい感じで映画はスタートします。私の大好物でもあるカルト教団系のお話じゃないですか。
貧しい生活やイヤになり、兄弟は再び教団に戻る決意をします。
弟の幼少期の記憶がなぜかあいまいです。それから、いくら話しかけても無視をする男。
しゃべれずにニコニコ笑うだけの男。多くを語らない醸造家、そして20代に見える40歳。
ところどころに妙な違和感を含ませながら映画が進みます。
なんだかいいじゃないですか。どんな展開が待っているのかまったく読めません。
正常と思っていた兄弟が異常なパターンか?
それとも彼らがしきりに吸っているタバコのようなものに何かしらの幻覚成分が入っているというオチか?
終盤に近づくとやっとループものらしいことが判明します。
得体の知れない何かが、強制的にループさせているのです。
ループものとくれば、どうやって脱出するかが一番のポイントでしょう。
脱出に失敗すれば永遠にループの中。成功してもあまり良い結論にならないのが常ですが、この映画の結末はループを抜けられなかった。でいいですよね。
ラストが妙にあいまいでわからなかったのですが、母親の事故現場に戻ったことで再びそこからループが始まると。
はじめは楽しみに見ていたのですが、ラストまで見て、その後の説明がまったくなく、何の意味があったのか?と頭をかしげるシーンがいくつか差し込まれています。
これは混乱させるためなのか、または尺が足りなかったのか。
なんだかモヤモヤした気持ちでこのレビューを書いています。
原題はThe Endless このタイトルがついているとある意味ネタばれになってしまうので、この日本の訳はありな部類に入りますかね。
カルトっぽい雰囲気とループものの掛け算で、映画全体は奇怪な雰囲気で進みます。
この感じはいままでにない1本だったです。
わたしは、ダニエル・ブレイク~普通の市民はいつだって被害者なんだと思う
第69回カンヌ国際映画祭パルムドール(最高賞)受賞。文部科学省特別選定作品。ダニエルが教えてくれたこと-隣の誰かを助けるだけで、人生は変えられるイギリス北東部ニューカッスルで大工として働く59歳のダニエル・ブレイクは、心臓の病を患い医者から仕事を止められる。国の援助を受けようとするが、複雑な制度が立ちふさがり必要な援助を受けることが出来ない。悪戦苦闘するダニエルだったが、シングルマザーのケイティと二人の子供の家族を助けたことから、交流が生まれる。しかし、厳しい現実が彼らを次第に追いつめていく。(C)Sixteen Tyne Limited, Why Not Productions, Wild Bunch, Les Films du Fleuve,British Broadcasting Corporation, France 2 Cinéma and The British Film Institute 2016
電子化についていけない老人ダニエルブレイクは社会的弱者だろうか。
母子家庭の彼女や転売で儲けようとする黒人男性が貧しい生活をおくらせざるを得ないのは、自業自得なのだろうか。
弱肉強食はサバンナの中だけの話ではない。われわれが暮らしているこの社会も同じだ。
小さな子供を連れて必死にたどり着いたこの街で、冷たくあしらわれる母親。
はじめは彼女も、しっかりと歩いていたのですが、空腹のあまりフードバンクでもらったものをその場で食べてしまう。
あのときすでに彼女の中の何かが変わってしまっていたのでしょう。
それから万引きをとがめられ、さらには体を売らなくてはならないほど落ちぶれてしまう。
最初の階段でつまずいたら、後は転がるように坂道を降りるだけ。
ダニエルブレイクも他人の心配をしているヒマないですよね。
公が提供するのは本当に困っている人への手助けではないことに気づくも、のっぴきならないところまで追い込まれる。
小さな子供が迎えに来なければ、彼はあそこであのまま飢え死にでもするつもりだったのでしょうか。
まともな思考を持ち、まだ十分働けるのになすすべがない。
ラストでやっと彼にも光が当てられ、ハッピーエンドで終わるのかと思ったのですが。。。
え、このタイミングで一人でトイレに行くの?
あれ、これもしかして駄目なパターンだよねと思っていたら案の定がっくりきてしまいました。
善良な一市民が社会に振り回された挙句に、その生涯を終える。
彼の意見は反映されることはなく、何度も何度も同じ悲劇が繰り返されるだけなんですよね。
時世のセリフは泣けてきちゃいました。
正しい人に、正しいものを、正しいタイミングで提供することはとても難しいことだと思いますが、私もダニエル・ブレイクと同じ立場になる可能性は非常に高い。
悪いのは、誰なんだろうか。やっぱり自己責任なのか。
女神の見えざる手~眠らないとお肌に悪いわよ。
大手ロビー会社で辣腕をふるうエリザベスは、銃擁護派団体から仕事を依頼される。女性の銃保持を認めるロビー活動で、新たな銃規制法案を廃案に持ち込んでくれというのだ。信念に反する仕事は出来ないと、エリザベスは部下を引き連れ、銃規制派のシュミットの小さなロビー会社に移籍。奇策ともいえる戦略によって、形成を有利に変えていく。だが、巨大な権力を持つ敵陣営も負けてはいない。そんな中エリザベスの過去のスキャンダルが暴かれ、スタッフに命の危険が迫るなど、事態は予測できない方向へ進んでいく…。© 2016 EUROPACORP - FRANCE 2 CINEMA
天才凄腕ロビイスト、エリザベス・スローンのお話。
ロビー活動というのは日本ではあまり受け入れられていないようで、私もよくわかりません。
ただ、政治に深くかかわっており、世論を操作し、議員達よりも力が強い人々らしいということは知っています。
このスローンさんは仕事に対して非常にドライ。勝つためなら手段を選ばず、使えるものは何でも使います。
それが世間の非難を浴びるものだったり、同僚に生命の危険を与えるものだとしても。
その強引さで自分自身の首を絞めているのかと思いきや、これも計算済み。
一番最後の最後まで必殺技を残しておいて、それをぶっ放してとどめを刺すのが彼女の得意技。
映画の中だとは言え、スローンさんのほうが何枚も上手でした。結局彼女は、自分自身までも犠牲にして銃の規制に対する法案を通しました。
アメリカの銃に対する問題は非常に大きく、彼女が公聴会で発言した内容は多くのアメリカ国民が感じていることでしょう。
その点でみても、社会風刺がきいており大変面白い1本でした。
主役を演じるのはジェシカ・チャステインさん。
芯のある感じがいいです。映画では終始厳しい役でしたが、少しほんわりする表情も
見たかったなと思いました。
あと、あの丸眼鏡の子もいいですね。
冒頭から何となく気になる存在には仕立て上げられていましたが、そう来るとは。
エンドタイトルが表示されてから、少しだけ続きがありました。
おそらく刑務所出所後のシーンだと思うのですが、なんだったのでしょかね。
その視線の先にいたのは、やっぱりジェーンかなぁ。
原題はミス・スローン。これだとなんのこっちゃわからないですね。
映画の登場人物はすべて女神の手のひらで踊らされてたということです。