全編ほぼ「棺桶の中」という究極の密室劇。もし自分がこんな状況に置かれたらと考えるだけで息苦しくなります。閉所恐怖症の人は本当に注意が必要な一本です。
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映画をざっくり紹介
『リミット』(原題:Buried、2010年公開)は、イラクで武装勢力に拉致されたアメリカ人トラック運転手ポール(ライアン・レイノルズ)が、目を覚ますと棺桶の中に閉じ込められているという状況から始まるサスペンス映画です。手元にあるのはライターと携帯電話だけ。わずか90分の上映時間が、彼の生死のタイムリミットそのものになります。
闇と光で描かれる不安感
画面の大半は真っ暗。照明はライターの小さな炎や携帯電話の青白い光、時には不安定な懐中電灯だけ。炎の揺らめきや、突然切れる光源が観客の神経を逆なでします。暗闇で「手が届きそうで届かない」小物を必死に探すシーンは、思わず自分の手まで伸ばしたくなるほどのもどかしさでした。
頼みの綱は携帯電話ですが、肝心な相手にはつながらず、つながっても冷たい対応ばかり。「テロとは交渉しない」という政府の原則は、エアコンの効いたオフィスで語る理屈にすぎないのだと痛感します。現地で拉致された一人の人間にとっては、切り捨てられたとしか思えない。
単調さの中に仕込まれた工夫
映画の舞台は棺桶一つ。どうしても展開が単調になりがちですが、監督はそこに様々な“イベント”を差し込んできます。蛇の登場や、砂がじわじわと流れ込む場面など、閉じ込められた恐怖に変化を与えています。ただ、蛇に関しては少し引き延ばし感もありましたね。
電話のやり取りの中で、会社の人事部長には苛立ちを覚え、不倫相手がちょっとだけ登場するなど、限られた空間にも人間模様が濃厚に描かれます。これがまた主人公の孤立感を深め、観ている側も胸がざわつきます。
主演ライアン・レイノルズの熱演
棺桶の中、ほぼ一人芝居で90分。ライアン・レイノルズの演技力がなければ成立しなかったでしょう。絶望、怒り、希望、諦め…その表情の変化だけで観客を引っ張っていきます。普段はアクションやコメディで知られる彼ですが、この作品では俳優としての底力を見せてくれました。
『ギルティ』との比較
同じく「電話」が命綱となる映画として『ギルティ』を思い出しました。どちらもワンシチュエーション・スリラーですが、私は『ギルティ』の方がサスペンス性が高く、観やすかった印象です。『リミット』は観る側に相当のストレスを与える作りなので、体力が必要ですね。
タイトルについて
邦題はシンプルに「リミット」ですが、原題は 「Buried(=埋葬された)」。
この単語を聞いただけで、もう息苦しさが襲ってきますよね。映画の舞台そのものをズバリ言い当てていて、私としては原題の方が作品の本質を表しているように思いました。「リミット」だと時間的な制約は伝わりますが、棺桶に生き埋めにされたという衝撃は半減してしまう。ここは原題のインパクトに軍配を上げたいところです。
最後に
「あと3分で着く」など少し無理のある展開もありましたが、それも含めて「極限状態に置かれた人間の無力さ」を強調していたように思います。観ていて息苦しくなるのに、最後まで目が離せない。そんな稀有な作品です。閉所が苦手でない方にはぜひ挑戦してほしい映画です。
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