この映画、暗いです。マフィア、裏社会、銃声、死。明るく終われるわけがない。でも、そんな中にも父と息子の絆や、守りたいという気持ちが織り込まれている一本でした。
あらすじ(3〜4行で概要説明)
『ロード・トゥ・パーディション』(2002年公開)は、禁酒法時代のアメリカを舞台に、マフィアの世界で生きる父と、その息子の逃避行を描いたクライム・ドラマ。裏社会で暗殺者として働く父(トム・ハンクス)が、息子と共に命を狙われながらも復讐と逃亡を続ける。暗くも美しい映像と、父子の複雑な愛情が胸に刺さる作品です。
好奇心は身を滅ぼす
どんな家庭でも、父親の仕事に少しのあこがれを抱くもの。
息子マイケル・ジュニアも例外ではなく、父の職業を知りたいと思ったその純粋さが、物語を動かします。
しかし、その「好奇心」がマフィアの血なまぐさい現実を引き寄せ、悲劇の連鎖へとつながってしまう。まさに、好奇心は身を滅ぼすというやつです。
この作品のテーマは単純に「守る」だけではなく、「たくましくなってほしい」という父の願いが根底にあるんだと思います。命の危険が迫る中、父は息子を銃から遠ざけつつも、生き抜く力を教えていく。そのバランスが絶妙でした。
ただし、全体的に映像も展開も暗め。晴れ間のない旅路を、観客も一緒に歩くような感覚になります。
ギャングのボスも結局のところふつうの父親だった
ギャングのボス(ポール・ニューマン)も、結局のところ「子供に甘い父親」。その甘さが悲劇を呼び、結果的に自分や周囲の破滅につながります。
父という存在の本能的な弱さは、立場や職業を超えて同じなのだと感じました。トム・ハンクス演じる主人公との対比も印象的です。
タイトルの意味と舞台背景
最初は「パーディションって人の名前?」と思っていましたが、実は地名。逃亡の果てに辿り着く場所です。
物語は1930年代、禁酒法が廃止される直前の不安定な時代。銀行口座や裏金を握る人間も悪事に加担しており、命が軽かった時代背景が映像からひしひしと伝わります。
主演のトム・ハンクスは、普段の温かい雰囲気を封印し、冷徹な暗殺者の顔を見せます。一方で息子に向ける眼差しには父としての優しさがにじみ出ており、このギャップが心を揺さぶります。
そして、狂気のカメラマン役ジュード・ロウ。この人はこういう役をやらせたら本当に怖い。登場するたびに空気が凍ります。
最後に
この映画はハッピーエンドを期待してはいけません。父親の罪は、どんなに足を洗おうとしても消えない。
暗く重い物語ですが、父と息子の関係、そして人の弱さと強さをじっくり描き切った秀作です。重たい作品をじっくり味わいたい方にはおすすめです。