子供の頃、お笑い番組で「スケート靴の紐が切れた」というネタがあったのを、おぼろげながら覚えていました。当時は何のことかさっぱりわかりませんでしたが、今回ご紹介する『アイ、トーニャ』を観て、その元ネタがこれだったのかと初めて知りました。
この映画は、元フィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの波乱万丈な半生を描いたドキュメンタリーです。彼女は、アメリカ人として初めてトリプルアクセルを成功させるという偉業を成し遂げた、まさに天才。しかし、ライバルであるナンシー・ケリガン襲撃事件という、フィギュアスケート史上最大の衝撃的な事件を起こしてしまい、フィギュア界から永久追放されてしまいます。まさに天国から地獄へと転落した彼女の人生の真相に迫る、見応えのある一本でした。
映画『アイ、トーニャ』とは?
2017年に公開された『アイ、トーニャ 史上最大のスキャンダル』(原題:I, Tonya)は、実在のフィギュアスケーター、トーニャ・ハーディングの半生を、コメディタッチも交えて描いた伝記映画です。貧しい家庭に生まれ、母親からの激しい虐待や夫からのDVに苦しみながらも、天性の才能でスケート界のトップへと上り詰めたトーニャ(マーゴット・ロビー)。しかし、ライバル選手襲撃事件をきっかけに、彼女の人生は狂い始めます。当時の関係者へのインタビューを交えながら、衝撃的な事件の意外な真相と、彼女の波乱に満ちた人生をユーモラスかつシニカルに描いた作品です。
栄光と転落、そして「紐が切れた」真相
トーニャがなぜそこまで追い込まれてしまったのか。この映画を観ると、その理由が痛いほど伝わってきます。決して楽しい気分で見られる映画ではありませんでした。特に、トーニャの母親がひどい。彼女は口を開けば暴言を吐き、自分の不幸を子供にぶつける。唯一の味方であるはずの母親に、一度も認めてもらえなかったトーニャの心情を思うと、胸が痛みます。
頂点に上り詰めるために、ある程度の反骨心は必要でしょう。しかし、彼女にはもともと才能があった。それを伸ばしきれなかったのは、間違いなくあの母親のせいでしょう。トーニャが悩んでいるときこそ、しっかりと支えてあげるべきだったのに。
そして、あのDV男である夫もひどかった。あんなのと一緒にいなければいいのに、と思うのですが、世の中には一定数そういう人がいるんですよね。トーニャもその一人でした。夫といるとひどい目に遭うとわかっているのに、離れることができない。
もっとスケートに集中できる環境が整っていたら、審査員に媚でも何でも売って、高得点を出せる土台を作ってあげられていたら。彼女の悪いところをすべてそぎ落とすと、トーニャらしくなくなってしまうのでしょうか。この素行の悪さと劣悪な環境があったからこそ、こんな映画が生まれたのかもしれません。
子供の頃に見た、あの「紐が切れた」パフォーマンスには、想像を絶する彼女の苦悩が込められていたのでしょう。最後まで見て、映画を思い出すと、やっぱり腹が立ってきます。登場人物みんなひどいわ。
