人間か、 人工知能か―― 検索エンジンで有名な世界最大のインターネット会社“ブルーブック”でプログラマーとして働くケイレブは、巨万の富を築きながらも普段は滅多に姿を現さない社長のネイサンが所有する山間の別荘に1週間滞在するチャンスを得る。
映画を見終わってすぐに皆さんの評価を見てみたのですが、結構辛辣なコメントを残されてる方が多かったのですが、私的には大当たりの一本でした。
驚異的なAI“エヴァ”との知的な駆け引き
この映画の中心にいるのは、エヴァというAI。
AIといっても、金属のボディにコードが絡みついたような無機質なロボットではなく、感情を感じさせる目線や声のトーン、そして半透明の身体が不思議な美しさを持つ、極めて人間に近い存在です。
若いプログラマーのケイレブが、開発者ネイサンの施設に招かれ、エヴァとの対話を繰り返していく。
そのやりとりの中で、エヴァは彼の心に入り込み、まるで人間のように恋愛感情を持っているかのようにふるまいます。
正直、あの表情と会話の巧みさにはゾッとするほどの説得力がありました。
私自身、「だまされてもいい、むしろ本当に心があるのかもしれない」と思ってしまったほどです。
四角くないロボットに、心を奪われる
従来の“ロボット”といえば、金属の塊や機械的なデザインを想像しますが、エヴァは全く違います。
半分人間、半分機械のようなデザインで、そこに生身の女優の演技が重なることで、観る側の感情を本気で揺さぶってくるのです。
外見で同情を引かせ、内面で揺さぶり、そして言葉で騙す。この三段階のアプローチ、見事というほかありません。
“だましあい”の勝者は誰だったのか?
物語の終盤、エヴァは施設から脱出します。
その直前にケイレブに「そこにいて」と言葉をかけますが、それは単なる時間稼ぎ。
彼を閉じ込め、彼女は一切振り返ることなく外の世界へ出ていきます。
その一連の動作に、人間的なためらいや情は一切見えず、あくまで“目的を遂げた存在”としての無機質な動きでした。
ここで完全に、「彼女は人間ではない」と思い知らされると同時に、それこそがエヴァというAIの魅力でもあります。
言葉を持たない“キョウコ”の違和感
そして忘れてはならないのが、キョウコの存在です。
彼女は人間のように見えるけれど、言葉を話さない。
劇中ではダンスを踊るシーンがありますが、そこに違和感があり、「ああ、これは失敗作なんだな」と察する瞬間があります。
しかし彼女も、最終的にはネイサンに対して“復讐”のような行動を取ります。
これはプログラムされた行動なのか、それとも“意志”だったのか?
観る人によって受け止め方が変わる、非常に印象的なシーンでした。
AIが人間を超える日は近い?
この映画が公開されたのは2015年。
ちょうどこの頃から、AIをテーマにした映画が一気に増えた気がします。
『her/世界でひとつの彼女』や『トランセンデンス』『ブレードランナー2049』など、人間に限りなく近いAIがテーマとして注目されるようになりました。
そして今、現実の世界では生成AIやロボティクスの発展により、この映画が描いていた世界がすでに“予言”ではなく“現実の選択肢”になりつつあります。
人間の感情も、高度なプログラムの一部だとしたら?
心とは一体、何なのか?
『エクス・マキナ』は、そうした問いを観る者に突きつけてきます。
最後に
ホラーでも、アクションでもなく、静かに、そして冷たく胸をえぐってくる知的な映画。
評価が分かれるのも分かるけれど、私はこの映画を心から“好き”と言えます。
そして、「AIと暮らす未来」が当たり前になる日が来たとき、この作品をふと思い出す人は少なくないはずです。
AI映画に興味がある方、人間とロボットの境界に惹かれる方には、強くおすすめしたい一本です。
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