トンビルオ~一番の能力者は呪医のおばちゃんですよね
マレーシアの山奥に、世にも恐ろしく醜い顔という呪いと、森の木々や大地を意のままに操れる力を併せ持って産まれた青年がいた。育ての父の庇護の下、素顔を仮面で覆い能力を隠して静かに暮らしていたが、土地開発を巡る地上げ抗争の中で父が殺されてしまう。怒りと自然を守るという使命…
森の奥に住む仮面をかぶったマッチョマン。彼は敵か、味方か。
冒頭に登場するパパはどう見ても悪人顔。トンビルオが住む森を無茶苦茶にしたり、ダムを作って住人を追い払ったりするに違いないと思ったのですが、彼は善人らしい。
良い人は長生きをしないものです。
偶然に起きたのか、意図的に起こしたのか結局よくわからなかったのですが、事故によってあっさりやられてしまいます。
このタイミングで裏ボスが明らかになります。これは割とよくあるパターン。
会社の事業云々というストーリーとトンビルオがどう絡むかと思っていたのですが、立ち退きを迫る悪い奴らが村を襲い焼き払い、その時にトンビルオが助けにやってきます。
仮面をかぶったトンビルオはあまり多くを語りません。
助けたつもりがいろいろと誤解されるのです。結局は誤解が解けて、悪い奴らをやっつけておしまいなのですけどね。
設定はやや作られた感がありました。子供が1人かと思ったら実は双子だったとかって鉄板ですよね。
兄弟が協力して、味方と思っていたやつをやっつけて、再びトンビルオは森に帰ると。
トンビルオの仮面の下が最後まで見れなかったのが残念ですね。恐ろしいってことですからそこは想像してくれってことなんでしょう。
カンフーやアクションシーンは結構見ごたえがあります。火だるまの人間が登場したり、銃で打ち抜かれたりするところはかなりリアルに作られていました。
特に叔父様のカンフーがすごい。まだまだ若いものには負けんといいながら戦っていそうです。
序盤有利だったのでもしかしたらあのイケメン俳優を伸してしまうのかと思いましたよ。
最後は、トンビルオのスーパーパワーで解決です。
あと、一番強いのは呪医のあのおばちゃんですよね。血気立った男を一撃で仕留め、負傷しながらも1人は川に流し、一人は育て上げる。そして、大人3人分の死体を処分する。
祈りの時に抱えていたのは二人の胎盤なんですね。
へその緒にしてはでかいなと思っていましたが、あんなものを後生大事に取っておいて、二人がピンチの時にテレパシーみたいなもんで意思を伝えるなんて相当の能力者です。
そのまま倒れこみ、強力な呪術で命まで持っていかれたのかと思いきや、普通に生きて生活しているという。やっぱり一番強いのはあのおばちゃんですね。
劇中にアッサラームという挨拶が出てくるので舞台は中東かと思いましたが、登場するキャストの皆様はどう見てもアジア人。あたりの風景も熱帯雨林で中東ではなさそう。
視聴後に調べたところマレーシアの映画ということがわかりました
登場する女性は、ヒジャブ(頭にかぶる布)のようなものをかぶっていましたし、映画にはつきものの露出らしい露出は一切なかったのでイスラム色の強いあちらの国かと勘違いしてしまいました。
このお話は民話などを元ネタにして、現代風に作ったものなんでしょうね。
どこの国にも悪い奴はいるんですね。
これが私の人生設計~落ち込んだ時に元気がもらえる作品
建築家として華々しいキャリアをもつセレーナは、新たなステップを踏み出そうと故郷のローマに帰ってきた。しかし、イタリアの建築業界は男性中心社会で、ろくな仕事に就けず貯金も底をつく。ある日、公営住宅のリフォーム建築案の公募を知った彼女は男性になりすましてエントリーする。
才能もやる気もある設計士セレーナ・ブルーノのお話です。
ドタバタコメディーなのですが、しっかりと緩急がついていて最後まで楽しめた1本でした。
彼女は世界でひととおり活躍したのち、故郷のイタリアに戻ります。中国やインドに行っていたら、おそらくもっと有名な人になっていたのかもしれません。
でも彼女はそれを望まなかった。自分の生まれ育った故郷のために働くことにしたのです。
イタリアにもどってみたものの、建築業界は男性上位の世界だったため、へんてこな仕事しか回ってきません。
才能があっても活かせないというのは本当に悲しいことですよね。
貯蓄が尽きた彼女は、レストランのウェイターになります。
これも驚きですよね。世界を股にかけて活躍していた建築家が、レストランのウェイトレスだなんて。
ほかに行くところはなかったのかよと言いたくなりますが、これが現実なのかもしれません。
このレストランのオーナーといい感じになるのですが、まさかのゲイ。いい感じにお酒を飲んでいたところで、突然上半身裸になって踊るものですから大笑いです。
自分の才能を活かしたいセレーナは、うそをついて建築デザインの仕事を受注します。
いろいろあってこのイケメンゲイと同じ屋根の下に住むことになるのですが、
次から次へと厄介ごとがやってきます。
これがほんとうに面白かった。奴隷No72とか、セレーナの家族とかなんというか味がありすぎます。
ああ、結局は二人がくっつくに違いないと思っていたのですが、まさかの別ルート。これも驚きました。
個人的にはやっぱりあのオーナーと再婚して欲しかった。そのほうが何というか毎日面白そうじゃないですか?
みんなハッピーになりそうですし、モテなさそうなメガネ野郎には身を引いてほしかった。
無能に描かれていたリパモンティとその付き添いの女性との関係も面白かったですよね。
最後は彼女が会社を牛耳るところまでを想定しましたが、尺の関係があるのかそこまでは語られませんでした。
多少は脚色されていると思いますがどうやらこれは実話らしいです。
イタリアの社会の暗い一面も指示しているんでしょうね。
作中に登場していた若者たちのような人は少なからずいるんでしょう。男性上位の世界とか、私が思っているイタリアとはちょっと違うイメージでした。
映画全体はイタリアらしい明るい感じで描かれ、気楽に見ることができます。
男どもをぎゃふんと言わせるシーンや、父と子の微妙な関係とか、ネタもふんだんに取り込まれており、それらすべてが最後にきれいにまとまる点もよかったです。
週末のひと時に、ちょっと気持ち沈んでいるときに見るとよいかもしれません。
しあわせの絵の具 / 愛を描く人 モード・ルイス ~小さな小さな夫婦の物語
カナダで最も有名な画家の、喜びと愛に満ちた真実の物語。
モード・ルイスを取り巻く環境はとても悲惨だった。
若年性リュウマチで小さい頃から不自由を強いられ、学校でも邪魔者扱い。
両親は早くに亡くなり、叔母の家に居候させてもらいますが、祖母はあまりいい顔をしない。性悪な兄に家を売られ、毎日毎日絵を描くのみ。
そして、彼女がそれを望んだのか、それとも相手に逃げられたのか。
妊娠して生んだ子供は死んだと告げられる。
あの叔母もひどいです。自分の命が短いからとそんな真実を告げなくても。
本人は贖罪のつもりなのでしょうが、モードからしたらひどい仕打ちでしかありません。
彼女を全く知らない人間がこんなことをいうのは不適切ですが、あの状況でよく平静を保ってられたと思います。
彼女は狂うどころか温かみのある絵を書き、無骨な夫と小さな家で生涯幸せな生活を送ったのです。
私はモード・ルイスの絵がいいとか悪いとかわかりません。
子供みたいなという表現も適切ではないと思いますが、純粋にただ感じたものをそのまま絵にしていて、素朴で温かい印象を受けました。
悲惨な境遇にいながらあんなきれいな絵を描けるということに驚いてしまいます。
映画の中でも彼女は小さなことに喜びを見出し、自分ができることを精一杯こなします。
愛想もなく無骨な印象の夫ですが、彼女をしっかりと支えていることがわかります。
夫に対する世間からの評判は悪かったみたいですけれども、彼女が自由にストレスなく絵を描ける環境を作ったのは彼だと思います。
映画では、少しずつ彼の気持ちがほぐれていくのがいいですね。
あの小さなかわいい家で、二人は一体どんな会話をしたのがとても気になります。
彼女が亡くなった後のシーンも良かったです。夫は悲しまなかった。
その理由の一つは、彼女の絵が部屋中にあったから。小さな彼女がいなくなっても、彼にとっては一緒にいるのと同じ気持ちになっていたのではないかと思います。
この映画の主人公が実在したとは知らず、エンドロールで彼女と思わしき写真が出たときに驚いてしまいました。
モード・ルイスのことも、彼女の書いた絵も全く知りませんでしたがとても感動した映画となりました。
お金やモノがあるからといって幸せではないのですよね。
騒ぎ立てる世間には見向きもせず、二人は自分たちのスタイルを最後まで貫きます。
自分がやりたかったことは何だったのか、自分の気持ちに正直に生きているか見直したくなる1本でした。
よかったですよー、これ。