「冥土の土産におじいちゃんと寝てあげてくれない?」 ある日、ヘルパーのサワは派遣先の家族から驚きの依頼を受ける。その当日に事件に巻き込まれ、気がつけば「家ナシ・金ナシ・仕事ナシ」。人生崖っぷちに立たされたサワは、ワケありじ いちゃんを見つけては、おしかけヘルパーをして…
主演は安藤さくらさん。
私がいま一番大好き……というか、他の女優さんが全く興味なくなるくらいダントツで好きです。
3時間と少々長めの作品でしたが、よかったですね。
タイトルから、私はコンドームの厚さの話と思いました。彼女はそれをどんな風に演じるのだろうと。
艶っぽいシーンも期待していたのですが、ほとんどなしと思っていいです。
その点は少し残念ですが、安藤さくら氏を十二分に堪能できた1本でした。
0.5ミリという言葉が出たのは、映画の中盤です。
サワ(安藤さくら氏)宛に送られたテープレコーダーを、ふるーい車のカセットデッキで再生するというかなり間接的な表現でした。
正直なところ「え?ここで?」と驚いたのですが、映画を最後までみて感じたのは、この映画のテーマは人と人との距離というか関係性でしょうか。
添い寝してほしいおじいちゃんと、カラオケ店のおじいちゃん。
それから1000万円のおじいちゃん(アホの坂田さんです)、ドアップで戦争のことを必死に語るおじいちゃん(津川雅彦さん)。
ラストは、日雇い労働者以下の生活を余儀なくさせられているおじいちゃん(榎本さん)でした。
印象的だったのは戦争のお話です。すでに痴呆が始まってしまったので、言葉はうまくつながらないのです。だけどもその必死さはわかる。彼が見てきた惨事を想像することができる。
サワは聞き役というよりか、話させる側に回り、彼の生きてきた人生に少しだけでも同調しようとするのです。
このおじいちゃんだけでなく、登場人物は誰もが何かを守ることに必死なのですが、長い時間にその本質がねじ曲がり、意味のないこと、無駄なことに重きを置いてしまう。
とっくの昔に関係はバラバラになっているのに、何とかこれまでの生活を続けようとする。その中にサワは飛び込むのです。
サワは介護という自分のできることでまず彼らに関与します。
サワの行動は崩壊を早めるでも遅めるでもなく、また、彼女の思いとは無関係に物事は進んでいく。
虚しさとかやるせなさというか、それが自然な流れなんだと思いました。
あのアナログテープが再生されたときに、また一人になったサワが諸行無常感に浸りながらエンディングかと思ったのですが、もう少し続きがありました。
あの少年というか少女は最後まで隠し玉だったのですね。
冒頭からものすごい違和感があったのですが、あんな結末とは。
サワは結局どういう気持ちで彼らに接していたのだろうかというのがとても気になります。
劇中の彼女の表情などから判断するに、現実を静かに受け入れるという素直さのようなものを感じました。
他人との摩擦がなければ人間って生きていられないんですよね。
それがたとえ人を傷つけたとしてもです。今回は助け合いみたいな心温まるお話ではなかったです。現実はもっと殺伐としていて、待ったなしで、淡々と進んでいくんだと思います。
高齢の男性の役はかなり味のあるメンツでしたが、他の役も演技派の個性的な人ばかり。見ごたえある1本でした。