1951年ベトナム、サイゴン。浪費家の家長の家に雇われ、田舎から奉公にやってきたムイは10歳の少女。家には働き者で優しい母と3人の甘やかされた息子たち、孫娘を亡くしてから引きこもっている祖母がいた。ムイは、年老いた先輩奉公人のそばで働きながら、料理と掃除を習い一家の雑事を懸...
ベトナムのサイゴンが舞台のこの映画。不思議な魅力はいったいどこからくるのだろう。
何の気なく見始めたものの、最後まで目を離せずぐっと引き込まれてしまいました。
全体的に静かで、セリフも少なく誰もがつぶやくように話すのみ。
虫の鳴き声、それから水の流れる音といった自然の音のほうが、セリフよりもおおいのではないかと思うくらいです。
唯一激しい感情表現があったのは、振られた良家のお嬢様が花瓶を割るところ。
ストーリーは一人の女性が幸せをつかむと言うハッピーエンドな作品だと思っています。
田舎から奉公にやってきたムイは10歳の少女。彼女は一生懸命仕事をします。奉公先の人たちが死ぬほど意地悪なわけでもなく、奉公先のだんな様と禁断の恋をするというわけでもありません。
特に母親はムイを自分の娘のように思い、大切に扱ってくれます。
奉公先のだんな様は、日がな一日楽器を弾いて、仕事らしい仕事はしない男。古い時代の価値観なのか家にある金を持ち出して、平気で外で女を作ります。
彼の子供達もいたずらっ子だったり、アリのような小さな生き物をいじめたりのシーンはありますが、度を越えるということはなく、大きな問題がある家族とは思えません。
迷惑ばかりかけてきた夫が死に、物語は10年後に一気に飛びます。
もしかしてあの子供達が覚醒して、サイコパスみたいになるのかと思っていたのですが、そんな展開にはなりませんでした。
ムイは家を離れ、小さいころあこがれたあのお兄さんのところで奉公を続けていたのです。彼女の美しさにある日突然気づいたグッドルッキングガイは婚約者を無慈悲に振り、ムイと結婚をするという話です。
ムイの怒っているのか、悲しんでいるのかわからない表情が怖すぎます。
私には何も考えず、静かに現実を受け入れるだけというような印象を受けました。不愉快な出来事があっても、悲しい出来事があってもぐっと我慢するのはベトナムの国民性なのかもしれません。
また、彼女の唯一の楽しみは、パパイヤを割った中にある小さな卵のようなものに指をうずめること。これもなんだか不気味です。これはなんの象徴でしょうか。
冒頭に登場する白い液体にパパイヤの中の小さな卵のようなもの。
私はこれでムイの幸せは好きな人の子供を宿すことなのかなと思ってしまいました。
ちょっと飛躍しすぎでしょうか。
格子の隙間からのぞき見るようなシーンが多く、なんとも居心地がわるいのだけども、続きが気になって仕方がない。目が離せない。
ほんとうに不思議な1本でした。ベトナムの映画ってこんな感じなんですかね。