七海、二十三歳の受難。嘘(ゆめ)と希望と愛の物語。東京の片隅で、それなりに普通に生きてきた私。しかし、その“普通”であることは、こんなにも残酷に、そしてあっさりと崩壊してしまった…。結婚相手でさえ、ネットの出会い系サイトで捜すことができ、家族や友人などの人間関係さえ、サービスとして購入できるこの時代、物事をあまり考えず、感情を波立たせず…というように“人並み”に生きてきた一人の女性が、いろいろな出会いと経験を通して、生まれ変わっていくという現代版「女の一生」。岩井俊二監督の国内での12年振りの実写作品であり、主演には正に旬の女優・黒木華を迎え、新たな岩井作品のミューズとなる。また、共演には綾野剛、シンガーソングライターのCoccoといった圧倒的な存在感を示すキャストが集う。(C)RVWフィルムパートナーズ
スワローテイルに引き続き、Amazonプライムで紹介されていたので見てみました。
特徴的なのがタイトル。これまた聞きなれない名前ですよね。
なんとなくその響きから妖精とか精霊なのだろうかと思いながら見始めました。
冒頭から1時間。主人公のナナミ(黒木 華さん)の悲劇がひたすら続きます。
さすがにあれはかわいそう過ぎるでしょう。彼女は一生懸命生きているんですよ。
確かにふわふわとしたところがあり、自分が何者かを見定められていないところははあるかもしれませんが、みんなそんなものじゃないですか。
頼りない彼女は何度も何度も弾き飛ばされてしまいます。そんな彼女を助けたのは、ネットで知り合った何でも屋の安室(綾野 剛さん)。
この何でも屋の存在は明かされることなく物語は進んでいきます。
彼はいったい何の目的で彼女を助けるのか。
「ランバラルの友達ですから。」と何度か言っていますが、さすがにそれだけではないでしょう。彼の怪しさは最後まで楽しめます。
映画を見始めてしばらくすると現れる花嫁。あれ、ここで結婚。とするとこの人がリップヴァンウィンクル?
そんなはずはないだろうと思いながら展開を待っていると、あっという間にナナミは離婚。
傷心の彼女の前に現れたのは売れない女優を10年やっている人懐っこいお姉さま(Coccoさん)
この人の足がものすごくきれいで、思わず見とれてしまうのですが、どうやら彼女がリップヴァンウィンクルらしい。
彼女の花嫁?ああ、ますます意味がわからない。
意外な展開に混乱しながら後半に突入すると、急に緩やかなテンポに切り替わってしまいます。
女性2人での気ままな暮らし。ナナミはささやかながら幸せをつかんだのかと思いました。
確かに楽しそうではあるのですが、後ろに見え隠れする妖しい影とでも言いましょうか、寂しさといいましょうか、壊れてしまいそうなはかなさといいますでしょうか、なんだか不穏な空気が少しずつ映画全体に充満してきます。
そして、楽しい生活は一晩で一気にひっくり返る。
あのシーンがこの映画の山場かと思ったら、もう一山ありました。
3人で昼間っから焼酎を飲むシーンですよね。
この2つの出来事がきっかけで、ナナミは切り替わったのだと思います。
ラスト、再び小さな部屋に戻って自分の足で歩き始めるナナミ。
そのシーンはよかった。いろいろなものから開放された彼女がいったいこれからどうやって生きていくのか。
彼女のよいところを大切にしてくれる人に出会えたらよいなと思いました。
最後まで安室の正体は明かされず。それがちょっと消化不良だったのですが、素直に考えれば、ナナミが金になると思ったから近づいたのでしょう。
彼女を完璧にコントロールし、彼は大金を手にしたわけですから。
そして、安室が狡猾なオオカミだとしたら、ナナミは幸薄いヒツジですね。この2人の雰囲気が最高です。
ナナミを守りたいという思いが前半しっかりと根付き、それを抱えたまま後半を楽しむことができ、この映画3時間もあるのですが、まったくその時間を感じさせないです。
作中に出てくるクラムボン、カムパネルラなんかもそれぞれきちんと意味があって使われており調べ始めるともう1回みたくなってしまいます。
邦画はあまり見ないのですが、これはオススメしたい1本です。
あと強烈にオススメされているリリーシュシュのすべてというのがあるのですが、
これはまだプライムでは見られないみたいなのですよね。
これも楽しみだ。早く解禁されないかな。