アマプラビデ王の日々

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空気人形~空気を入れてもらうシーンが忘れられない。

 

空気人形 [Blu-ray]

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古びたアパートで、持ち主である秀雄と暮らす空気人形――空っぽな、誰かの「代用品」。ある朝、本来持ってはいけない「心」を持ってしまう。 秀雄が仕事に出かけると、洋服を着て靴を履いて、街へと歩き出す。 初めて見る外の世界で、いろいろな人間とすれ違い、つながっていく空気人形。ある日、レンタルビデオ店で働く純一と出会い、その店でアルバイトをすることに。 密かに純一に想いを寄せる空気人形だったが、 彼の心の中にどこか自分と同じ空虚感を感じてしまう――。(C)2009 業田良家小学館,『空気人形』製作委員会

 

いろいろと考えさせられる映画でした。

まず、空気人形を主人公にするという着眼点がとても興味深い。どちらかと言うとエロ系の展開になってしまいがちだと思うのですが、しっかりと練られたストーリーでとても重い内容になっています。

 

空気を入れなければふにゃふにゃとつぶれてしまう空気人形。空っぽなのは果たして彼女だけなのでしょうか。


答えはもちろんNOです。あの過食症の女性も、独身の男性も本当は空っぽなんですよね。太陽に当たったときに自分だけが透けて見えるシーンは空気人形ならではでとてもいい。

 

それを恥ずかしいと感じてしまうのは、彼女の心の奥に生まれた恋愛感情だけではないはずです。映画のセリフにもありましたが、その空っぽを隠すために人間は他人を求め、あるいは騙すのでしょう。

 

空気人形ですから、当然男性の処理として扱われるシーンもいくつかありましたが、何の感情もわかない。

 

この映画で一番の見所は、好きな人に空気を入れてもらうシーンでしょう。あのシーンはもう少し引き伸ばして、もったいぶって欲しかった。そして、傷口をわざと広げて彼の息を吸う彼女。あのいとおしさをもっと感じたかった。

 

好きな人の空気で自分が満たされると言うのはいったいどんな気分なんだろうか。
もしそれが実現できるなら、自分自身に穴をあけるのも悪くないと思ってしまいます。

 

彼女はその至高の快楽を自分の好きな男性にも与えようと思った。このシーンが伏線となって、最後のあの行為につながります。

 

私は板尾さん演じるあの中年男性の視点でしかこの映画を見ることはできません。
若い頃のことはもう忘れてしまったんです。特に、この手のむなしさのようなものはすっかり。

 

彼が心を持ったダッチワイフに一言こういいます。「人間みたいなのは面倒臭い。」

そうなんですよね。彼はもてないからじゃなくて、あえてこういう生活を行っているのでしょう。


好きとか嫌いとかじゃなくてめんどくさい。わずらわしいんですよ。この年になって結婚して子供もいるとなんだか人間関係が嫌になることはままあります。


だからと言って簡単に切ることもできない。だったら最初からそれを求めなければいいんですよ。結局救いもなく、この映画は終わるのかと思ったのですが彼女の最後の一息で少しだけ世界が変わります。

 

もしかしたらそれはほんの一瞬かもしれない。だけども確実に自分以外の誰かの隙間を埋めることができた。

 

主演のペ・ドゥナさんは韓国の女優さんです。


日本の人らしくないと思いましたし、異国の女優さんを使うことで、独特の間が作られるんですね。

 

オススメしたい1本でした。