アマプラビデ王の日々

プライム会員ならば見放題。人生最高の1本が見つかるまで。。。

アクト・オブ・キリング~狂っているのはこの国か、それとも私の頭なのか。

 

60年代のインドネシアで密かに行われた100万人規模の大虐殺。その実行者は軍ではなく、"プレマン"と呼ばれる民間のやくざ・民兵たちであり、驚くべきことに、いまも"国民的英雄"として楽しげに暮らしている。

 

インドネシアで100万人以上が殺害されたといわれているの9月30日事件のお話。

 

殺人を引き受けた反共産党メンバーはプレマンと呼ばれ、その中でも1000人以上を殺害したといわれるアンワル・コンゴが主役です。

 

このドキュメンタリー、登場しているプレマンたちは踊らされていますよね。
そう思いながら終始見てしまいました。

 

プレマン達に映画を撮らせ、その様子をつなぎ合わせたものがこのドキュメンタリーなのですが、自分たちの行動をフィルムという客観的なものを通してみることで、プレマン達がどれだけひどいことをしたのか、罪の意識を感じさせようという意図がある気がします。

 

役者でもないプレマン達が作る映画は三流ですが、実際に殺害される役、尊厳を踏みにじられる役をやることで、自分たちのおろかさに気づいていきます。

 

アンワル・コンゴは1000人も殺したとは思えなくくらい毒がない表情をしています。

金銭的にも余裕があるのでしょうし、着ている服装にも気を遣っていることがわかります。

 

一番恐ろしさを感じたのが、アンワルの隣にいるあの太鼓腹の男です。

 

話している内容はいたって普通なのですが、同じ人間に見えない。サイコパスってこういう人をいうのではないかと思いましたよ。

 

彼は結婚して子供までいるのですが、映画の中では意味も無く女装の姿で登場したり、
人魚姫に登場するような魔女のようないでたちでたびたび現れます。

 

あれは本人がやりたいといったのか、ドキュメントをとるスタッフがそう指示したのかわかりませんが、なぜそんなことをするのかがさっぱりわからない。

 

変な衣装で顔色一つ変えず話をする彼は本当に怖かった。

 


もう一つこのドキュメンタリーで強烈な嫌悪感を感じたのがプレマンを利用して政治的に成功をした人たち。

 

同じ人間なのに、彼らをどうしても好きになれない。結局はプレマンは彼らに利用されただけなのではないでしょうか。

 

全編を通して感じる違和感、不快感はこれまでにない映画です。

義理の親をプレマンに殺された男のシーンなど、かなりショッキングな映像も多いです。

 

あの乳飲み子を差し出すシーンは本当の出来事なのでしょうね。あまりにも非人道的のため、ぬいぐるみで代用した。そして村を襲ったあのシーン。呆然とするお母さんの表情は忘れられません。彼女はもしかしたら親しい人をプレマンに惨殺されたのかもしれません。


これがついこないだ起きた出来事で、さらにこの出来事について触れることはインドネシア国内ではタブーとなっている。

 

さらに今でも共産党メンバーへの迫害が続いていると考えると人間というのは本当に恐ろしい。

 

ゆっくりビールを飲みながら見るようなものではないですね。あの国はくるっているのか、それとも私のほうが異端なのか。

 

こちらの精神まで壊れてしまいそうな1本でした。